研究課題/領域番号 |
17K06627
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研究機関 | 国立研究開発法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
小林 拓朗 国立研究開発法人国立環境研究所, 資源循環・廃棄物研究センター, 主任研究員 (10583172)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 生物膜 / メタン発酵 / 産業排水 / カチオン |
研究実績の概要 |
初年度に構築した生物膜の形成速度の評価方法を用いて、高Na濃度下で生物膜形成を促進させる条件の探索を行なった。Ca、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、ポリ-L-リシン(PLL)、ポリ硫酸第二鉄(ポリ鉄)の4種類を、150 mMのNa濃度下において別々に添加し、生物膜の形成速度を評価したところ、CaとPACはほとんど形成速度にポジティブな影響がなく、PLLはわずかに形成が促進されたのに対し、ポリ鉄は大きな形成促進の影響が認められた。10 mg/Lの添加量において、約1時間あたりPAC添加の場合の8倍の形成量が認められた。これを踏まえ、カチオンポリマーの嫌気性処理UASB装置内における生物膜の発達促進を評価するために、高塩濃度の模擬排水を用いた連続処理実験を約1年間実施した。排水中のNa濃度を3.5~14 g/Lの範囲で変化させたところ、3.5~7g/Lの範囲では生物膜の発達においてさほど障害がないことが確認された。10g/L以上のNa濃度においてUASB装置内の生物膜の発達が妨げられる傾向が明らかとなってきた。それ故、この濃度の排水の処理においてポリ鉄の添加有無の両条件での生物膜発達の違いを評価するための比較対照実験に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は目標を大幅に超えた進捗が得られたものの、二年目は幅広い塩濃度範囲での連続実験を実施したことで、生物膜形成阻害が確認される濃度の特定に約1年間を要した。1-2年目を総合して予定通りの進捗度合いであると考える。
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今後の研究の推進方策 |
上述のように、センサーを用いた評価法により、高塩濃度における生物膜発達の阻害に対しては特にカチオンポリマーが有効で、検討した中でもポリ塩化第二鉄が効果的であった。また、連続実験から、嫌気性生物膜の発達阻害が顕著になるNa濃度の範囲が特定できた。これらの成果を踏まえて、今年度はUASBリアクターの連続実験における高塩濃度下でのポリ鉄の添加による発達促進法の効果を検証する。具体的にはポリ鉄添加有無の各条件での生物膜発達を評価するための2台の装置を準備し、Na濃度10 g/L以上での連続実験を行う。微粉砕された嫌気性グラニュール種汚泥を用いたスタートアップを始め、グラニュールの粒度分布や槽内の汚泥濃度の推移をモニタリングしながら発達度合いの評価を行う。特にポリ鉄による生物膜発達の促進と、K元素添加によるNa生物阻害の軽減の2点に焦点を当てて、それぞれの生物膜発達への寄与を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
生物膜粒度分布の委託分析を複数回実施予定であったが、全ての試料の年度内での分析の完了が困難であったため、当該額は繰り越して次年度に分析を実施する。
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