研究課題/領域番号 |
17K06629
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
原田 幸博 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (10272791)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 建築構造・材料 / 鋼構造 / 低サイクル疲労 |
研究実績の概要 |
はじめに、既往の鉄骨構造物の多数回繰り返し載荷実験(低サイクル疲労試験)結果を、国内外によらず、溶接継手・部材(接合部)・架構実験の各々について広く収集した。これらについては、申請者自身ならびに我が国の建築構造分野の研究者の実験結果にとどまらず、国外ならびに土木・機械分野での溶接継手の低サイクル疲労試験結果も分析の対象としている。特に、欧州では鉄骨架構の耐震設計のクライテリア設定に低サイクル疲労の考え方を用いる手法の研究が進んでおり、イタリア国内の鉄骨・合成構造の耐震設計基準改定に関する研究プロジェクトや鉄骨構造物の破壊モード別の安全性評価手法確立を目指す欧州内の研究プロジェクトで関連実験結果や安全性評価手法が既にまとめられている。これらプロジェクトと本研究課題には共通する点が多く参考になる点も多いため、上記プロジェクトのリーダーであった研究者たちにコンタクトをとって研究プロジェクトの成果・関連実験データ等の提供を受けた。 次いで、繰り返しせん断応力を受ける溶接継目の低サイクル疲労試験の準備を開始した。当初計画では、既往文献調査と並行して溶接継目の有限要素解析の実施する予定であったが、既往文献を分析した結果、せん断応力下での低サイクル疲労性能に関する知見を補う必要性を感じた。そのため、計画を変更して同試験を実施することとし、その準備を進めている。今年度末時点で、試験体製作・実験施設スケジュール確保・計測計画確定までを済ませており、順調に進捗している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画では、既往文献調査と並行して溶接継目の有限要素解析の実施する予定であったが、既往文献を分析した結果、せん断応力下での低サイクル疲労性能に関する知見を補う必要性を感じた。そのため、計画を変更して、繰り返しせん断応力を受ける溶接継目の低サイクル疲労試験を実施することとした。現時点では、同試験の準備を進めているところである。2年目の半ばまでには実験を完了できる見込みであり、現在の遅れが研究全体の進捗に及ぼす影響はないと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の前半は、繰り返しせん断応力を受ける溶接継目の低サイクル疲労試験の実施に注力する予定である。これについては、試験体製作・実験施設スケジュール確保を済ませており、順調に進捗している。年度の後半は、有限要素解析を援用したひずみ集中箇所の局所ひずみ-部材変形関係の定量化に取り組む予定である。部材(接合部)・架構の多数回繰り返し載荷時の破壊状況と溶接継手の低サイクル疲労試験時の破壊状況とが対応づけ可能であることが、本研究課題で提案する手法における重要なポイントである。そこで、有限要素解析による数値シミュレーションを行って、部材・架構の変形量と溶接部近傍の局所ひずみの対応関係を得る。ここで、申請者自身の既往研究での解析結果より、溶接部のディテールによってひずみ集中点が異なることがわかっている(溶接止端縁またはスカラップ底)。この局所的なひずみ集中点は疲労破壊の起点となり得るので、溶接継手と部材(接合部)・架構の双方でこの局所ひずみの値に着目すれば、溶接継手の挙動と部材(接合部)・架構の挙動を結びつけることができるだろう。なお、溶接止端縁の局所ひずみに着目して低サイクル疲労破壊を論じる手法は、既に欧州の研究者により試みられており、彼らと情報交換しながら研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度後半に研究計画を一部変更して次年度に低サイクル疲労試験を実施することとしたため、当初計画から支出内容を変更する必要が生じた。実験実施に伴って必要になる物品の購入は次年度となるため、今年度予算の一部を次年度に使用したいと考える。
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