大都市の超高層建物は都市機能の中枢を担い,かつ数千人規模の人間が建物内部で社会活動をしているため,地震時には,建物の構造を無損傷にするだけでなく,建物機能を維持し地震直後から社会活動を再開することが強く望まれている。その解決策の一つとして建物内部に地震エネルギーを吸収する制振装置(ダンパー)を設置する制振構造が採用されている例が多い。本研究は長周期地震動をうける超高層制振建物の多数回繰返しによるダンパーの性能低下を考慮した設計手法の提案を最終目的する。 最終年度はまず,昨年度に実装した長時間の繰返しによる性能成果を考慮した粘性ダンパーの解析モデルを用いて,粘性ダンパーの性能低下が超高層タテモノンの地震応答増大に与える影響について詳細に分析した。ここでは,複数の3次元部材構成モデルによる超高層建物に様々なダンパー量や配置をセットし,それらの影響を調べた。また,性能低下を考慮した予測手法を構築するために,地震時において粘性ダンパーがダンパー吸収したエネルギーの分担の予測手法を構築した。これにより,煩雑であった時刻歴応答解析をせずに,どの層のダンパーがどの程度の性能低下を引き起こすか予測できるようになった。 一方,実大粘弾性ダンパーの長時間繰返し実験結果を3次元FEMを用いて,エネルギー吸収に伴う内部温度の上昇やそれによるダンパーの性能低下を高精度に再現することができた。
|