研究課題/領域番号 |
17K06636
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
中村 孝也 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (50305421)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 鉄筋コンクリート柱 / 軸力上昇 / 崩壊 / 有限要素解析 |
研究実績の概要 |
複数の種類の柱からなる鉄筋コンクリート(RC)建物では地震時に,脆弱な柱が先にせん断破壊した後,柱の変形が進むと脆弱な柱の軸力が減少し梁を介して移動して,周囲の比較的靭性のある柱の軸力が上昇すると考えられる。軸力上昇する柱は,それを考慮しない場合と比べて構造評価が低下するため危険であるという視点から,曲げ降伏後せん断破壊するRC 柱の軸力上昇を考慮した崩壊実験を行い,一定軸力の場合と比較検討した。1/2 スケールのRC柱試験体を3体製作し,逆対称変形を保つ形式で試験体に軸力を作用させた状態で水平方向加力を行い,最終的に崩壊(軸力保持能力喪失)するまでの実験を実施した。実験変数は軸力比ηとした。すなわち,η=0.2から0.3への軸力上昇(その時の水平変形0.75%),η=0.2(一定),η=0.3(一定),の3種類とした。実験の結果,軸力上昇する柱の崩壊水平変形と崩壊鉛直変形は,上昇後のη=0.3で一定軸力載荷した柱に近く,崩壊に近い段階のηが崩壊性状に大きく影響すること,等が明らかとなった。 次に,それら試験体3 体の実験結果を有限要素法(FEM)による 解析を用いて再現した上で,パラメトリック解析により軸力上昇が柱の崩壊性状に及ぼす要因を探る検討を行った。解析モデルでの要素分割のサイズは50 mmを基本とする矩形メッシュとし,加力方法は実験を再現した。解析の結果,1)ηの上昇幅については,釣り合い軸力以下の軸力であっても最大付近で軸力上昇させた場合には耐力が上がらないこと,2)終局水平変形(水平力が最大耐力の80%まで低下した時の水平変形)については,上昇後軸力比が大きいほど小さいこと,3)軸力上昇時の水平変形については,水平変形が小さい値で軸力を上げるほど最大強度も大きくなること,等が確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は鉄筋コンクリート柱の軸力上昇を考慮した試験体3体の崩壊実験を実施し,崩壊水平変形,崩壊鉛直変形などのデータを得ることができた。更に,試験体を有限要素法に基づいてモデル化し,軸力の上昇幅や軸力上昇時水平変形を変数とした解析を行い,それらのパラメータが柱の崩壊性状に及ぼす影響の概略を捉えることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は,平成29年度に引き続き鉄筋コンクリート柱の軸力上昇を考慮した崩壊実験を行う予定である。実験変数は過去の実験データを分析することにより決定する予定であるが,今のところ軸力上昇時水平変形の大小を考えている。更に,有限要素解析を実施し,平成29年度における解析で検討していない事項,例えば実験で一部の試験体に見られた付着割裂ひび割れの影響などを分析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
鉄筋コンクリート柱の実験に際して,当初の計画よりも試験体数を減らしたことが主な理由である。これは実験変数を決めるための過去の研究成果の調査が予定通り進まなかったことが原因であるが,引き続き調査を進めて平成30年度以降の実験に取り入れる予定である。
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