研究課題/領域番号 |
17K06637
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
田守 伸一郎 信州大学, 学術研究院工学系, 教授 (40179916)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 最適設計 / 免震構造物 / 焼き鈍し法 / タブーサーチ |
研究実績の概要 |
鉄筋コンクリート免震構造物の上部構造の部材と免震装置選択の最適設計システムを焼き鈍し法により作成した。 最適化手法として採用したのは多目的温度並列擬似焼きなまし法(Multi-objective Temperature Parallel Simulated Annealing,以下MOTPSAと表記)であり,以下を目的とした。(1)制約条件を満足したうえで,上部構造の層間変形角を小さくする設計解と骨組重量を小さくする設計解を含むパレート最適解集合を探索すること。(2)MOTPSAを用いることで従来の手法よりも少ない探索個体数で優れた解の探索を行うこと。作成した最適設計システムを用いて6層4x1スパンの免震建物の最適化を実施した。その結果,本研究で作成した最適設計システムを用いて設計された建物は実施例より小さいにもかかわらず,小さな断面の柱・はりからできているにもかかわらず,地震時の建物変形は小さいことを確認した。 さらに,遺伝的アルゴリズムのひとつであるSPEA2を用いた最適設計システムとの性能を比較した。MOTPSAとSPEA2それぞれ最も早く評価値が実施例を上回ったものを比較するとそのタイミングは、層間変形角に関してはMOTPSAでは1400個体、SPEA2では2200個体、建物重量に関しては、MOTPSAで8000個体、SPEA2で13000個体とどちらの評価値においてもMOTPSAがSPEA2の約6割の個体数で探索をすることができることがわかった。 また,タブーサーチを用いた鉄骨造免震建物と鉄筋コンクリート造免震建物の最適設計システムを構築した。このシステムの性能をあげるための検討を平成30年度に実施予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では,タブーサーチによる最適設計システムの構築であったので,この手法を利用した鉄筋コンクリート構造免震建物と鉄骨造免震建物の最適設計支援システムを構築した。さらに,多目的焼き鈍し法による最適システムも構築した。多目的焼き鈍し法による最適システムの性能向上は順調に進み,その性能は従来の遺伝的アルゴリズムと比較すると計算回数が60%程度で同等以上の性能を持つ設計解を見つけることができている。 一方,タブーサーチによる最適設計システムの性能は,従来の遺伝的アルゴリズムと同等程度であり,より少ない計算回数でよりよい性能の解を得るための方法を検討中である。よって,おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は,多目的タブーサーチを用いた最適設計システムの性能向上を中心に研究を進める予定である。最適設計システムの性能を向上させるためには,最適化の過程で使用する様々なパラメータを用いて試行錯誤する必要がある。調整が必要なパラメータは,次世代に作成する近傍解の数,近傍解作成時に変更する部材数,次世代の親となる解の選択基準,タブーリストの保存期間など多数におよぶ。 さらに,昨年度作成した多目的焼き鈍し法を適用する建物の例を増やして,最適システムの性能を確認する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を計画していた数値計算ライブラリーが研究で使用している計算環境(OSやコンパイラー)とあわないため,購入できなかった。代替え措置としてフリーの計算環境を整え,数値計算ライブラリーもフリーのものを導入した。 平成30年度は最適化手法の適応性と性能向上が必要なため,高速の計算機の導入とデータ整理の人件費に使用する計画である。
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