研究実績の概要 |
鉄筋コンクリート造免震建物に対して,多点探索型の最適化手法であるSPEA2では,最適化のために多くの計算時間を要したため,本研究では単点探索型の最適化手法のひとつである多目的タブー探索法(Multi-Objective Tabu Search : MOTS)を採用する。さらに,部材のグループ化をおこなうとともに,ⅰ)上下階の柱幅に関して,上層階の柱を細いものとする,ⅱ)柱幅を梁幅よりも太くするという2つの制約条件を設定し,施工性を考慮したより現実の建物に近い設計解の探索をおこなった。その結果SPEA2よりMOTSの方が計算効率が高い(16倍程度)ことを確認した。 鉄骨造免震建物を対象にした最適設計支援システムにおいては,安定して制約条件を満足し,建物の安全性とコストを考慮した実用的な設計解を効率よく探索することを目的とし,従来の最適化手法であるSPEA2,MOHC(Multi-Objective Hill Climbing),及びMOTSに最適化の「誘導システム」を応用したプログラムを開発した。誘導システムにおいては,以下の操作をする。すなわち,許容応力度検定を満たさない骨組部材の中から検定比が大きいほど変更箇所に選ばれやすいように変更箇所を決定し,ランダムに部材を大きくする。許容応力度検定を満足しない箇所が全て選択可能部材の中で最大となった場合,検定比が小さいほど変更箇所に選ばれやすいように変更箇所を決定し,ランダムに部材を小さくする。なお,変更箇所の決定には,検定比を用いたルーレット選択を用いる。以上の操作によって制約条件を満足するために必要な計算回数は激減した。 以上の検討によって,これまでより計算効率の高い免震構造物の最適設計システムが構築できたといえる。
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