研究課題/領域番号 |
17K06638
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山崎 真理子 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (70346170)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 経年使用木材 / 残存寿命評価 / 疲労試験 / エネルギー解析 / セルロース格子ひずみ |
研究実績の概要 |
古材を対象とした動的引張試験を行い,木材の疲労性能に及ぼす古材化の影響を調べ,エネルギー論を用いて耐久性を考察した。 試験にはアカマツの新材との古材の無欠点小試験体を用いた.古材供試材は,長野県須坂市の浄運寺庫裏(築250年)から採取した.動的引張試験では,繊維と並行方向に引張荷重を与えた.試験は荷重制御で行い,負荷波形を三角波,負荷周波数を1Hzとした.ロードセルからの荷重と試験体中央部のひずみをセンサインターフェースを介しPCに収録した(サンプリング周波数50Hz).ひずみの計測は,試験体スパン中央部にひずみゲージ(ゲージ長10mm)を貼付して行った.各試験体の引張強度を静的試験により得られたヤング率と引張強度の回帰式より推定し,動的試験ではこの推定強度の約55~115%の応力レベル(SL)で負荷を与えた.試験体数は新材25体,古材27体である.得られた知見は次の通りである. 新材の破壊形態は,静的試験時と比べて,全体的に繊維の引き抜けで破壊しており,脆性的な破壊形態はわずかである.特にSLの低下に伴い,繊維が引抜けながら破壊する試験体が増加した.これに対して,古材では全体的に脆性的な破壊形態を示した.応力-ひずみ曲線の挙動について,新材は疲労破壊近傍において急激な変化が見られるのに対して,古材では試験開始から破壊までほぼ一定の挙動を示した.3.包絡線ひずみエネルギーは,古材は新材と比べて1.73 kJ/m3/MPa低い(99%有意).これは250年の年月の間に消費したエネルギーに相当すると考えられる.さらに,終局ひずみエネルギーも古材の方が小さく,包絡線エネルギーに占める割合は新材と古材で異なった.耐久性評価の指標にできるのでないかと考えている. また,古材を対象としたXRD測定について,力学負荷装置の開発を行い,引張と圧縮の負荷試験を開始した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画のうち、古材の引張疲労試験とそのエネルギー解析、古材のXRD試験の予備試験と本試験の一部を終えた。 これらの成果について、学会発表を行うとともに、学術論文の作成に当たっている。
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今後の研究の推進方策 |
研究は当初計画通りに進んでいる。 本年度は、古材の曲げ疲労試験の予備試験、古材化モデル試験である熱処理材の本試験を実施する。 なお,古材の供試材については更なる入手を検討していく.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画から逸脱した経費使用はない。次年度使用が生じたのは,疲労試験に重点を置いて研究を進めたためXRD測定の実施が当初計画より若干少なかったためである.次年度はXRD測定を中心に実験を行う予定である.
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