研究課題/領域番号 |
17K06642
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
森迫 清貴 京都工芸繊維大学, 法人本部, 学長 (90127168)
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研究分担者 |
村本 真 京都工芸繊維大学, デザイン・建築学系, 准教授 (70510296)
矢ヶ崎 善太郎 京都工芸繊維大学, デザイン・建築学系, 准教授 (90314301)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 極薄土壁 / 茶室・数寄屋建築 / 復元力特性 / 押込試験 / 圧縮強度 / 開口率 |
研究実績の概要 |
本研究は,茶室・数寄屋建築にみられる土壁厚が薄く繊細な架構の耐震性能評価を目的とする.平成30年度に実施した研究を以下に示す. (1) 茶室・数寄屋建築にみられる45~30mmの極めて薄い壁厚の土壁(以降,極薄土壁とよぶ)の性能を昨年度に引き続き実験的に調べた.平成30年度は,開口付きの場合について 繰り返し載荷実験を実施した.実験モデルは,昨年度の茶室・数寄屋建築に関する文献調査および実測調査に基づき4つ(下地窓付き,垂れ壁のみ,垂れ壁と腰壁,躙り口付き)の架構とした.その結果,極薄土壁の場合,最終加力までには耐力低下し,鉛直荷重や柱径の大きさで荷重-変形角関係が異なること.壁厚が45mm程度の一間幅相当の土壁において,開口部の有無により,最大耐力に1.2kN程度の差が生じたが,最大耐力以降の荷重-変形角包絡曲線は同じ履歴となること.極薄土壁の場合,変形の進展に従って,土壁両面が浮い(剥がれ)て両面の面外変位が大きくなることなどがわかった.この繰り返し載荷実験において,画像解析システムを用いて,壁面両面の壁土挙動を計測したが,極薄土壁の場合は,町家型土壁と異なる壁土挙動となることがはっきりした. (2) 既存の土壁実験のデータベースを作成し,それらの結果を分析するため,本研究では開口付き(垂れ壁,腰壁等を含む)土壁実験の文献を収集した.これらの文献で示されている荷重-変形角包絡曲線と(1)で実施した極薄土壁の実験例をデータベースに追加した.極薄土壁における分析では,柱径がφ90mmで壁厚が45mm程度の土壁で,開口率と最大耐力および終局耐力, 降伏耐力,相当壁倍率のそれぞれの間に相関がみられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
茶室をモデルとした開口付き実大土壁の繰り返し載荷実験を行うことができ,それらの繰り返し荷重-変形角関係を得ることができた.当初は開口付きの場合においても土壁補修による効果を検討する予定であったが,予算上の制約もあり,実施しなかった.そのほか,実験データベースに必要なデータの収集については順調に進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は,これまでに収集してきた土壁実験のデータベースを軸組,土壁仕様,開口の有無等を整理して構築する.さらに,データベース化した実験の荷重-変形角包絡曲線との対応関係を分析することに注力したい.
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次年度使用額が生じた理由 |
計測機器の不調から,押込試験装置をしばらく使用できなかったため.これを使用する実験については研究時間を検討の上,再考した上で,次年度に実験を行うこととしたため.
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