研究課題/領域番号 |
17K06647
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
山口 信 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 助教 (80570746)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 耐爆性能 / スラリー充填繊維コンクリート / 積層補強 |
研究実績の概要 |
スラリー充填繊維コンクリート(SIFCON)の断面積層耐爆補強材としての用途開発に資するため、モルタル調合によるSIFCON用高流動グラウト材を開発するとともに、これを適用したSIFCONの基礎的力学特性について実験的検討を行った。その結果として、主に以下の知見が得られた:(1) 珪砂7, 8号相当の粒度を有する細骨材を対結合材質量比で40~80%含有し、尚且つ単位セメント量の50%を高炉スラグ微粉末で置換した高流動グラウト材を用いることにより、98%以上の良好なグラウト充填率を有するSIFCONを得ることが可能である。(2) 適切な材料および調合を選定することにより、マトリックスに細骨材を混入した場合であってもペースト調合の場合と同等の力学特性を有するSIFCONを得ることが可能である。 次に、上記実験において比較的高い曲げ靭性を示した調合によるSIFCONを全断面に適用した鉄筋コンクリート(RC)版の接触爆発に対する耐爆性能について検討した。また、耐久性・耐火性等の面で弱点となり易い接合界面を廃し、シームレスなSIFCON積層補強RC版を構築することを目的に、裏面近傍に鋼繊維を、それ以外の部分に粗骨材をそれぞれプレパックし、その全層にグラウト材を注入した総プレパックドSIFCON積層補強RC版の耐爆性能についても実験的検討を行った。その結果として、以下の知見が得られた:(1) モルタル調合SIFCONは、既報のペースト調合SIFCONと同等のスポール低減性能を有しており、尚且つそのクレータ深さも普通コンクリートの50%程度と小さくなる傾向にある。(2) 総プレパックドSIFCON積層補強RC版は、既報の接合界面を有するSIFCON積層補強RC版と同等の耐爆性能を有する。このことは、耐久性等の面で弱点となり易い接合界面を設けなくとも、補強層のせん断抵抗が充分に大きければ、スポール破壊面を形成する斜めひび割れの進展経路を制御可能であることを示唆していると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SIFCONによる断面積層補強を施すことによりRC版の接触爆発に対する耐爆性能が飛躍的に改善されることを確認するとともに、耐久性・耐火性等の面で弱点となり易い接合界面を廃した総プレパックドSIFCON積層補強RC版の良好な耐爆性能を明らかにした点において、本研究は現段階でおおむね順調に進捗しているものと判断される。
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今後の研究の推進方策 |
RC版裏面のごく薄層に繊維補強セメント複合材料(FRCC)を積層することによりRC版の耐爆性能を大きく向上させるためには、それに用いるFRCC自体の耐爆性能の更なる向上や、高い耐爆性能を得るためのFRCCの材料設計技術の構築が必要であると考えられる。そこで、当初の研究計画に若干の変更を加え、上記を目的とした実験的検討を追加する。具体的には、繊維種類、繊維アスペクト比、マトリックス調合、繊維体積率、異種繊維のハイブリッド使用等がFRCCの耐爆性能に及ぼす影響について検討を行い、断面積層耐爆補強材として好適なFRCCの調合条件を特定する。以上の実験結果に基づき特定された調合のFRCCを用い、RC版に対する断面積層補強効果を検討することとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費の精算の際に予想額との誤差が生じたものである。翌年度分として請求した助成金と合わせ、本研究遂行のために使用する予定である。
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