超高層建築物、あるいは今後建設が予想される超々高層建築物の耐風設計を行う場合、応答に伴う風力、所謂、非定常風力の評価が重要になる。本研究では、元の変位および風力データをAnalytic Signalを用いて複素数に拡張し、Wavelet変換という時間局所性を有する基底を用いた解析により、変位と風力の位相関係を時間の関数として評価し、時々刻々変化する非定常風力を直接求める手法を開発した。同手法では直交性を有するMeyerのWaveletを用いており、風力の仕事、あるいは構造物の減衰による消費エネルギーを評価することができる。 ロッキング模型を用いた風洞実験結果について、非定常風力と応答振幅との関係を調べ、提案した方法を用いることで、変位振幅の増減と整合する非定常風力を、時間の関数として評価できることを確認した。特に風洞流という比較的定常な流れの下でも、振動状態は時折強い非定常性を示すことなどを明らかにすることができ、ほぼ期待通りの成果が得られた。 最終年度は、5自由度弾性模型を製作し、一様流および勾配流を用いた風洞実験を行い、116点の風圧および5層の風直交方向変位と頂部の風方向変位を計測した。得られた結果について上記の解析を行い、モーダル変位およびモーダル風力の変動成分の時間変化を周波数域に分解して示すした。また、両者の位相関係を用い多上記の方法により、時々刻々の振幅変化と整合する非定常風力が得られること、それらの相互相関関係から風力に伴う振動とともに振動に伴う風力についても明確に示すことができること、および風力の仕事と構造物の減衰による消費エネルギーがほぼ一致することから、定量的にも適切に評価できることを確認した。 当初予定していなかった多自由度弾性模型を用いた実験を優先したため、予定していた野外実験結果との比較は今後の課題としたい。
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