研究課題/領域番号 |
17K06656
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
師橋 憲貴 日本大学, 生産工学部, 教授 (90220110)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 低品質再生骨材コンクリート / 場所打ち鉄筋コンクリート杭 / ビニロン繊維 / 乾燥収縮率 / せん断耐力 / 構造ヘルスモニタリング / 再生粗骨材 / 再生細骨材 |
研究実績の概要 |
繊維補強低品質再生骨材コンクリートを用いた場所打ち鉄筋コンクリート杭のせん断耐力を検討するにあたり,まず実験計画を行った。 繊維については,繊維補強コンクリートを建築構造物の場所打ち鉄筋コンクリート杭へ適用するため,その基礎的性状を把握することを目的として文献調査を行った。調査した内容は,繊維補強コンクリートのフレッシュ性状,強度特性(圧縮強度,曲げ強度,引張強度),耐久性(乾燥収縮率,乾燥収縮ひび割れ,中性化,耐凍害性)などに関する項目である。繊維の種類,径および長さなどの形状,繊維の添加率の違いにより各種性状に及ぼす影響を文献により調べた。繊維の種類としては,近年建築構造物への適用が顕著なビニロン繊維を採用することとした。 低品質再生骨材コンクリートについては,平成26年10月20日に日本建築学会から発行された,再生骨材を用いるコンクリートの設計・製造・施工指針(案)の『第11章 鉄筋コンクリートに用いる再生骨材コンクリートL』に示される再生骨材Lの置換率の上限値を使用することとした。使用する置換率は再生細骨材の有効利用を考慮して,再生粗骨材と再生細骨材を併用した場合の置換率として,再生粗骨材を30 %と再生細骨材を15 %とした。置換率の上限値とすることで乾燥収縮率が大きくなると考えられる厳しい条件下の低品質再生骨材コンクリートを用いる設定とした。 主筋については,場所打ち鉄筋コンクリート杭のせん断耐力を検討するための中心圧縮実験試験体とせん断耐力実験試験体の主筋の長さなどの配筋計画,ひずみゲージ貼付け位置の検討を行った。また,横補強筋については,横補強筋の径,リングの形状および継手位置,ひずみゲージ貼付け位置の検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験計画における使用材料の検討に対して構造ヘルスモニタリング装置の製作企業,ビニロン繊維メーカー,低品質再生骨材コンクリートの製造工場などとの打合せおよび調整に時間が掛かってしまった。また,場所打ち鉄筋コンクリート杭試験体の製作会社の試験体を設置するストックヤードが他の研究機関からの試験体作製依頼により混んでいて当面開いていないことなどの理由で具体的な試験体の作製計画の段取りが遅れてしまった。 構造ヘルスモニタリング装置の製造企業との打合せでは,試験体に設置する光ファイバーセンサの種類や形状などを設計図で確認し,光ファイバーセンサの本体を受注生産しているドイツから輸入した。またビニロン繊維メーカーとの打合せでは,乾燥収縮率あるいは構造耐力のどちらを優先させて改善させるのかによって使用する繊維の種類や形状の選択,添加量の違いについて協議した。 低品質再生骨材コンクリートの製造工場との打合せでは,再生骨材と天然骨材との併用について,天然骨材の調達方法や製造工場の出荷実績によるスランプ値および圧縮強度発現の協議に時間を費やした。 現在は,実験計画が完了し,試験体の作製に取り掛かっている。まず試験体内部の鉄筋を購入し,ひずみ測定用のひずみゲージの貼付け作業を先行させている。主筋については,場所打ち鉄筋コンクリート杭のせん断耐力を検討するための中心圧縮実験試験体とせん断耐力実験試験体に分けて,異なる主筋の長さごとにひずみゲージの貼付け作業を行った。並行して,横補強筋については,横補強筋のリングの内側にひずみゲージの貼付け作業を行った。低品質再生骨材ンクリートの打設は,平成30年9月に予定しており,平成30年10月にコンクリートの材齢が5週時における載荷実験を行う予定である。実験後は早急に実験データを分析してまとめる方針である。
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今後の研究の推進方策 |
低品質再生骨材コンクリートを用いた場所打ち鉄筋コンクリート杭は乾燥収縮ひひ割れが発生すると予想されるため,材齢5週実験用と材齢1年実験用の2シリーズについて同時に作製する。平成30年9月にコンクリートを打設後,材齢が若く乾燥収縮ひび割れがまだ発生していない材齢5週実験用の杭試験体を平成30年10月に載荷し,杭の構造耐力を確認する。 また,ビニロン繊維で補強した低品質再生骨材コンクリートを用いたコンクリート角柱供試体を恒温恒湿室に保存して,乾燥収縮率を定期的に計測し乾燥収縮に対するビニロン繊維の効果を検討する。さらに,杭試験体の乾燥収縮ひび割れの発生状況を材齢1年実験用の杭試験体を対象にして長期的に観察する。杭試験体の表面の乾燥収縮ひび割れの発生にともなうひずみ状態の変化を計測するため,杭試験体内部に光ファイバセンサを取付し,継続的に構造ヘルスモニタリングを行う予定としている。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 実験計画が遅れてしまったため,杭試験体の作製に掛かる費用の支出が次年度以降となってしまった。実験計画が決定したので,現在,杭試験体の製作会社に依頼中であり,場所打ち鉄筋コンクリート杭のせん断耐力を検討するための中心圧縮実験試験体8体とせん断耐力実験試験体8体の製作費として次年度の使用を予定している。 (使用計画) 平成30年5月に杭試験体の製作会社に発注を依頼予定であり,鉄筋の加工・配筋,型枠の切断・組立作業が行われる予定である。平成30年9月に再生骨材コンクリートを打設予定であり,コンクリートを打設後は2~3週間杭試験体の養生を行った後,平成30年10月には杭試験体が納品となるので,杭試験体の作製費用が支出される予定としている。
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