本研究では、様々な条件において小舞土壁塗りおよびモルタル塗りの真壁が風雨を受けた際の浸入雨水の挙動を明らかにし、そのうえで真壁に施す雨仕舞による雨水浸入の抑制効果を確かめる。令和元年度は前年度に引き続き、真壁に用いる材料を対象として吸水試験を行った。さらに前年度行えなかった壁要素試験体による送風散水実験を行った。そして材料物性の結果を用いて要素試験体における浸入雨水の挙動を解析的手法により考察した。 まず吸水試験では、真壁を構成する関東荒壁土、関東中塗り土、関西荒壁土、関西中塗り土、軽量モルタル、普通モルタル、砂漆喰、上塗り漆喰に対して吸水試験を行った。試験片は矩形の平板であり、壁を想定し垂直に立てた状態で、小口の下面から上向き吸水と上面からの下向き吸水、さらにモルタル試験片のみ平部から水平方向に吸水させた。この吸水試験により各材料の吸水速度係数や最大吸水量などの吸水特性を把握した。 次に送風散水実験では、関東仕様の小舞土壁真壁とモルタル真壁(直張り構法)を対象とした。試験面は315mm×315mmで厚さ方向の寸法は原寸とし、材料・調合、下地等の仕様は標準的なものとした。昨年度と異なり、小舞土壁試験体では雨水が壁体内に浸入した後の挙動も確認するため、試験体の裏面(室内側)まで仕上げた要素試験体を作製した。モルタル試験体も含め、材料の種類や雨仕舞の要素および送風散水条件を変えて実験を行い、浸入雨水の挙動の違いについていくつかの知見を得た。 さらに、材料試験で得られた各材料の吸水速度係数などを用い、送風散水実験における浸入雨水の挙動を再現する数値解析を行った。まだ検討の初期段階で解析モデルが単純なため、細部の挙動が再現できていないが、今後、徐々に制度の向上を図っていきたい。
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