研究課題/領域番号 |
17K06665
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研究機関 | 鹿児島工業高等専門学校 |
研究代表者 |
川添 敦也 鹿児島工業高等専門学校, 都市環境デザイン工学科, 教授 (50710290)
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研究分担者 |
塩屋 晋一 鹿児島大学, 理工学域工学系, 教授 (80170851)
池田 正利 鹿児島工業高等専門学校, 都市環境デザイン工学科, 教授 (60176104)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 残留変形 / 損傷抑制 / 高強度鉄筋 / 二次剛性 / 復元モーメント / 制震構造 |
研究実績の概要 |
大地震により大変形(層間変形角が1/50rad.程度)を経験しても残留変形を継続使用が可能な範囲(残留層間変形角が1/400rad.未満)に抑制できるRC造建物を開発している。梁の上端に高強度鉄筋を用いることにより,フレームが降伏後に制震構造と同様の二次剛性を持たせることができる。過去の実験結果に基づきRC梁とRC柱の解析モデルを提案している。塑性ヒンジをマルチスプリング,鉄筋の抜出しを回転バネ,せん断すべりをせん断すべりバネでモデル化し,弾性部分はひび割れによる曲げ剛性の低下を考慮した。これらの解析モデルを使って,実験の加力履歴に合わせた動的解析を行い,実験結果をほぼ再現している。 平成29年度は柱梁部材の解析モデルを平面フレームに適用し解析を行った。解析対象のRCフレームは2層1スパンおよび4層2スパンであり,それぞれ普通鉄筋だけを用いた従来型のフレームおよび梁の上端に高強度鉄筋を用いた改良型のフレームについて解析を行った。2層1スパンのフレームには,水平加速度を質点に与え,目標変形角に達した後自由振動させた。4層2スパンのフレームには,5つの地震波を使って時刻歴応答解析を行った。 以上の解析の結果,下記の知見が得られた。(1) 改良型では層間変形角が1/50rad.を経験しても,フレームの残留変形角を1/800rad.以下に抑制できた。しかし,従来型では1/400rad.を上回る場合も生じた。(2) 改良型梁を用いることにより,地震後の梁のたわみを抑制することができる。従来型では層間変形角が1/50rad.を経験すると,地震後のたわみは長期荷重時に比べ3~4倍まで増大したが,改良型ではほとんど変化しなかった。 (3) 改良型フレームのベースシアは,層間変形角が1/50rad.に達した時,従来型の場合よりも最大で30%近く増加した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来型の梁試験体と梁の上端をすべて高強度鉄筋とした試験体について,すでに実験を実施し解析モデルを作成している。解析結果は実験を概ね再現している。これらの解析モデルをRCフレームに適用し解析を行い,残留変形の抑制効果を確認している。 梁の上端をすべて高強度鉄筋とした場合,梁が降伏した後も二次剛性を発揮するため,部材角が大変形に達するまでに,部材のせん断力は大きく上昇する。残留変形を抑制しながら,梁のせん断力の上昇を可能な限り抑えるために,梁の上端筋の配置と本数は変えずに,高強度鉄筋の割合を変化させた梁試験体について実験を行う。 平成29年度に4本の上端筋のうち高強度鉄筋を1本または2本とした2体の試験体を製作している。過去の梁の実験では,せん断すべりの影響による再加力時の剛性の低下を確認している。今回の試験体では,せん断すべりの現象を積極的に抑制するため,せん断すべり防止筋を考案し配筋している。 以上,29年度に計画した研究課題については,予定通りに進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は平成29年度に製作した梁試験体の加力試験を行い,解析モデルを作成する。実験は,過去の実験で使用した加力装置を用いて,最大応答後の自由振動を想定した準静的加力を行う。当初,鹿児島大学で実験を実施する予定であったが,実験のスケジュールや必要な人員の関係から,鹿児島高専で実施することにした。現在,実験装置を準備している。実験結果を用いて,梁の解析モデルを作成する。せん断すべり防止筋の効果により,以前提案した解析モデルの内容を変更する可能性がある。 来年度は実験により得られた解析モデルをRCフレームに組み込み,動的解析を行う。従来型のフレーム(β≒0%)に対して,梁上端筋の高強度鉄筋の割合を変化させた場合(β=10~20%)で解析を行う。さらに,従来型の試験体で残留変形角が目標値を超えた層のみに,改良型梁を用いた場合について検討する。一部の層にのみ改良型梁を使用することにより,残留変形が抑制できれば,層せん断力の上昇を最小限に抑えることができる。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定の物品の価格が予定額よりも少額であったため次年度使用額が生じた。消耗品の購入に充当する予定である。
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