BCP等のソフト的な災害対策の重要度が高まる近年において、地震後の建物の継続使用性を確保することの必要性が高まっている。この中で、大地震を被った時に生じる杭基礎の損傷は建物の沈下や傾斜に繋がるため、杭基礎の健全性は地震後の建物の継続使用性に大きな影響を及ぼす。ただし、杭の損傷は直接確認することが困難なため、現状として、杭基礎の損傷に対する継続使用性の判断根拠は明確になっておらず、杭基礎の健全性が十分に管理されているとは言い難い。そこで本研究課題では、過去の地震被害事例に基づいて、杭基礎の地震後残余性能の評価および杭基礎の健全性の評価方法を提示することを目的としている。今年度の成果は次の通りである。 ・2016年熊本地震における杭基礎の被害事例のパラメトリックスタディにより、地震観測記録を主体とした分析によって、上部構造の損傷が小さい場合での杭頭被害の有無を検知することはある程度可能と考えられる。ただし、検討事例はPHC杭で支持されている低層3階RC建物をベースとしたものであり、今後、建物規模や基礎の埋込み量が変化した場合を検証する必要がある。 ・杭頭が損傷した場合に建物の機能継続を確保するための工法の有無が建物の継続使用の判断に影響するという観点のもと、杭頭と基礎版が切り離されている条件で杭の支持力に期待する杭頭絶縁基礎に焦点を当て、模型振動実験により地震時の沈下・傾斜挙動を分析した。その結果、地中の杭は地盤を介して建物重量の半分以上を負担できる可能性があること、地中の杭が振動による建物の残留傾斜を軽減できる可能性があることを示した。
|