研究課題/領域番号 |
17K06669
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
小松 喜美 秋田大学, 理工学研究科, 准教授 (90422162)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 凍結層 / 表面形状 / 凍結促進 |
研究実績の概要 |
冬期間に排水管に生じる凍結による管閉塞は漏水や事故に繋がるために,雪国の建物にとって大きな課題のひとつである.これを克服するために,ヒーターなどを使用することが一般的であるが,コストが大きいことが問題である.筆者らはヒーターを用いない管閉塞を防止手法を提案しているが,「外気温が著しく低下している場合には排水管の途中にも氷塊が発生して管閉塞抑制効果を弱める」,「排水の落下地点に氷旬が発生し,管閉塞の起点となる」という技術的課題がある. このような研究課題に対し,今年度は主に,管内を伝うように流下する極微少な流量の水の凍結現象の定量的評価を行えるような実験装置の開発を行った.実験装置は低温循環水槽で冷却された水を,氷点下20度程度に設定した低恒温室内に流し,排水管を模擬した鉛直下向きの角部を有する傾斜流路内を流下させ,流下水の凍結挙動を検討できようにした.流路内を流れる水は入口温度・流量を調節することができ,流路の傾斜角度と低恒温室内温度も任意に調整することができる.開発した装置を用いて実験を行った結果,流路の傾斜角度および入口水温と,水の凍結が開始する位置には相関関係があることが示唆された.一方で,凍結開始位置の時間変化の変化量は,入口水温を変化させても,あまり変化しないことが分かった.また,入口水温は凍結開始位置よりも,凍結量に大きな影響を与えることが分かった.凍結層が形成されると,流下水は凍結層の表面を流れるために,流下水が下流に向かうほど凍結層の表面積は大きくなり,さらに氷の表面が波打つことで,著しく凍結を促進させることが分かった.今後は,この部分のモデル化に繋がるような実験手法やデータ整理法の確立が必要である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験装置の開発と検証に時間を有したため,PIV法による流れの可視化に対する検討が遅れている. また,数値解析モデルの開発はオリジナルコードによる開発を目指していたが,現象の三次元性や計算格子と形状の一致性の問題から,商用計算ソフトウェアを使用することに方針転換した.
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今後の研究の推進方策 |
まずはPIV法により流れ場と凍結層の干渉が,凍結現象に及ぼす影響を実験的に検討する.同時に,数値シミュレーションによる検討を進めるべく,商用ソフトウェアを用いたモデル開発を行う.これらの成果を用いて,最終的には,凍結防止限界温度や流量の予測式などの検討および氷旬を防止する手法の検討を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究進捗の遅れに伴い,研究発表年度を変更したため,旅費を次年度に繰り越した.また,PIV計測手法の確立が遅れているために,カメラの選定や周辺機器の更新や再選定を次年度に繰り越した. よって,H30年度はPIV計測機器に関する分と旅費が,当初の申請額より,多くなる予定である.
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