研究課題/領域番号 |
17K06672
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
吉田 伸治 奈良女子大学, 生活環境科学系, 准教授 (50343190)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 暑熱環境 / 屋外空間 / 熱刺激 / 光刺激 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、暑熱環境下の光(日射)刺激と選択される適応行動の関係分析に関する研究に取り組んだ。 具体的には、熱、空気、光環境条件を制御した人工気象室を対象に、被験者を用いた温熱生理・心理状態の計測・アンケート調査により、空間滞在者の温熱環境と光環境、適応行動の関係を分析した。今回の計測では、被験者に対し、日射の直射の有無、照射強度、サングラスの装着の有無をパラメータにした実験を行った。実験の結果、日射の強度の増加は、曝露環境に対する非許容状態に到達する時間を早めること、サングラスの装着はこの非許容のレベルの緩和に有効であること、が明らかとなった。 また、この日射による熱と光の刺激の双方の影響の作用が懸念される事例として、従来の遮熱フィルム貼り付け窓近傍に生じる鏡面反射に伴う歩行空間への流入が暑熱環境を悪化させる問題の対策も検討した。本研究では、この対策として窓面へ入射する一部を天空に再帰反射する窓(再帰反射フィルム貼り付け窓)の設置に着目し、これと普通ガラス、LowEガラス等の従来の遮熱フィルム設置時、並びに壁面緑化敷設時に形成される歩行空間の暑熱環境を研究代表者が開発する数値解析手法により比較・分析した。分析の結果、①再帰反射フィルム貼り付け窓の設置は、従来の遮熱フィルムに比べ、街路空間への日射の鏡面反射後の入射を半減させることにより空間の温熱快適性の改善に寄与すること、②従来の遮熱フィルムとコンクリート壁で構成される外表面に対する改善策として壁面緑化の敷設と再帰フィルム貼り付け窓の設置の双方の効果を比較する場合、窓面積の小さい高窓においても再帰窓の設置による鏡面反射日射の削減効果が、壁面緑化による壁外表面温度の低下による放射熱の照り返しの緩和効果を上回ること、が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定の様な被験者実験を実施できた。被験者数、実験期間の制約でやや実験条件が少なくなった点が課題としてあげられるが、熱的刺激が同等であっても、サングラスの装着の有無による光刺激の差異が滞在者の空間受容性に影響が生じることが明らかとなったため、定性的には期待する傾向が確認された。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、当初の計画に従い、以下の研究に取り組む予定である。 (1) 屋外環境実測による暑熱環境下の光(日射)と適応行動の関係分析 (2) 熱・光刺激を考慮した環境適応行動のモデル関数の提案 (3) 熱・空気(気流)・光環境の連成数値解析技術に基づく屋外複合環境評価技術の開発
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次年度使用額が生じた理由 |
概ね当初の予定通りの経費利用が行われたものの、想定よりも少ない経費で購入できた物品等があったため、配分金額に対し僅かではあるが残額が生じた。残額については主として次年度の旅費に充てたいと考える。
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