研究課題/領域番号 |
17K06674
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
福代 和宏 山口大学, 大学院技術経営研究科, 教授 (30346572)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | エネルギー消費 / 電力消費量 / 住宅部門 / カンボジア / ラオス / ミャンマー |
研究実績の概要 |
東南アジアの後発途上国であるCLM諸国(カンボジア,ラオス,ミャンマー)の住宅部門におけるエネルギー消費量把握を目的として,社会経済調査データの収集・更新・分析を行った。CLM諸国との比較のため,CLM諸国以外のASEAN各国,中国南部各省ならびにラオスと同じ内陸国であるネパールのデータも併せて収集した。 ASEAN,中国南部,ネパールの住宅部門一人当たり年間電力消費量と一人当たりGDP(PPP)との関係を分析したところ,ブルネイ,シンガポール,ベトナムを除く諸国・諸地域では,一人当たりGDPが1000ドル上昇するごとに電力消費量が35±5kWh上昇するという相関関係が見られた。GDPが電力消費量に及ぼすGranger因果性に関しては,インドネシア,広西,ラオス,ミャンマー,ネパール,タイにおいてp<0.05~0.1の水準で有意性が見られた。本研究で対象とする国々のうち,ラオスとミャンマーについては経済レベルが電力消費に影響すると言える。 カンボジアに関してはGranger因果性が有意ではなかったが,以下の調査結果からは経済成長がエネルギー消費の増加を引き起こしているものと判断される。プノンペンにおいては2004年から2016年までの間に,一世帯当たり収入(中央値)は2.0倍,電力消費量(中央値)は1.4倍に拡大した。カンボジア全土において2006年までは照明用エネルギーとしてランプ用灯油が電力を上回っていたものの,2016年には電力が8割近くを占め,灯油の使用がほぼなくなった。住宅については気候に対応した伝統的建築は減少し,レンガ組積造が増加している。家電品の増加に加え,気候に応じないレンガ組積造建築の増加は冷房需要の増加につながっていると考えられる。電力需要の増加に対して水力発電所の増設が追いつかず,火力発電所が急増していることは,温暖化防止の面で問題であると言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
カンボジア,ラオスに関しては順調にデータ収集と現地調査を進め,分析を実施している。これらの国々における経済状況とエネルギー消費の関係を明らかにし,エネルギー消費の将来予測を行ったほか,温室効果ガス削減技術の現状,普及可能性についてまとめた。これらの結果は国際会議等で発表し,論文としても公開している。 ミャンマーに関しては,社会経済データの収集を進めつつ,調査の進め方について現地コンサルタントとの打ち合わせを済ませているが,国情が影響し,現地調査が滞っている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,CLM諸国の社会経済調査データおよびエネルギー消費量(とくに電力消費量)データの更新を行う。とくにミャンマーについては,コロナ禍による渡航自粛が解除され次第,現地調査を進め,住まい,耐久消費財の所有状況とエネルギー消費量の関係について現状の把握を行う予定である。またこれらの調査および分析に加え,CLM諸国における省エネ行動,省エネ機器導入,再生可能エネルギーの活用の現状ならびに効果について調査を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究科長としての学内業務,とくに経営系専門職大学院の認証評価への対応のため,本研究に対し十分な時間を割けず,とくにミャンマー国内における調査活動を展開できなかったため,次年度使用額が生じた。 次年度はとくにミャンマーにおける調査活動の遅れを取り戻すために助成金を使用し,コロナウイルス感染症拡大に伴う渡航自粛が解除され次第,現地コンサルタントとともに現地調査を推進する。
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備考 |
本研究で収集したカンボジア,ラオス,ミャンマーの住宅部門のエネルギー消費量の他,アセアン各国およびネパールの住宅部門エネルギー消費量について集約・公表している。
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