廊下歩行時の注視点分布と瞳孔径変化を測定し、視力、握力、2ステップ値(T値、転倒危険度の指標。低いほど危険)、日常の光環境意識(光意識)、別途実施の光環境評価実験(明条件3300lx、暗条件600lx)での評価との関係について、以下を明らかにした。 A)高齢41人と学生32人について、視野を縦横3×3=9領域に分割すると、1)注視点が2領域に出現する高齢者は視力や握力やT値が低く、光意識「まぶしさに鈍感」ほどT値が低い、2)3領域に出現する高齢者はT値が高い。3)学生は注視点分布とT値は無関係。 B)高齢20人について、水平3分割のうち中央部を上下10領域に分割し、注視点が1領域に集中するD1(全体の42.0%)と2領域に出現するD2(40.0%)を比較すると、1)D1の注視点は上部に多く、D2は中央部に多い、2)T値に差はない、3)D1は光意識「部屋全体が明るいのを好まない」がD2は「好む」、4)D1は光意識「まぶしさに敏感でも鈍感でもない」がD2は「敏感」、5)光環境評価ではD1は暗条件で「不快」が多く、D2は明条件でまぶしさが「気になる」が多い。6)75歳前後では、D1は光環境評価に年齢群間差がなく、D2は高齢群が、暗条件がより「明るい」、「好き」、「快適」、明条件がよりまぶしさが「気にならない」。 C)高齢40人について、照度急増箇所での縮瞳速度(最小径になるまでの速さ)は、1)T値小ほど、歩行遅いほど遅い。75歳以上は縮瞳速度とT値の関係が弱く、歩行時間との関係が強い、2)光意識 「まぶしさに敏感」側、「目が疲れやすくない」側、「暗いところでものが見にくくない」側は、縮瞳速度が遅い。75歳以上はこれらの関係が弱い、3)光環境評価の明るさは縮瞳速度と無関係、4)まぶしさ「気にならない」側、光環境「快適」側、光環境「好き」側、作業性「はかどる」側のほうが、縮瞳速度が遅い。
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