研究課題/領域番号 |
17K06677
|
研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
望月 悦子 千葉工業大学, 創造工学部, 教授 (80458629)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 照明改修 / 有機EL照明 / LED照明 / 内装材 / 被験者実験 |
研究実績の概要 |
建築物の長寿命化が求められる中、建築物を有効活用しつつ保存することを目的に、用途変更、照明改修が余儀なくされることがある。一般照明用光源は約60年おきに新規光源に置き換わってきた。新規光源に対応した照明改修が随時求められるが、単なる光源の置き換えでは、建築本来の美観・空間的魅力を損ねる可能性もある。 本研究の目的は、歴史的建築物の当初の雰囲気を的確に表現する照明改修の方法を提案することである。2017年度は、光源の種類や設定照度の違いが内装材の見えに与える影響を検証した。 実験には、同形の模型(W: 900×D: 900×H:600)を3つ用意した。覗き穴から正面に見える壁面に評価対象の内装材を設置し、内装材設置面以外はN9.5の無彩色で仕上げた。天井面には光源装置を設置し、有機EL照明は天井面全体から、白熱電球とLED電球は均等に配置された6箇所の天井開口から模型内部を照明するようにした。被験者は、目線高さが正面壁面の中央に来るよう覗き穴から模型内部を注視した。 実験では、用途変更された邸宅で多く使用されている内装材10種類について評価した。照明光源の相関色温度はいずれも約2700K、模型内照度は模型中央の床面で40lxと100lxの2条件に設定した。被験者には20名の学生を用い、各条件の印象をSD法で評価し、さらに、白熱電球40lxで照明した場合を基準とし、異なる照明条件での各内装材の印象をME法で比較評価した。 SD法による評価の結果では、どの内装材も設定照度が高い方が快適性因子の得点が高く、力動性因子は内装材の種類によって概ね決まり、白熱電球で得点が高くなる傾向にあった。 ME法による評価の結果では、「やわらかさ」「まぶしさ」はLED、有機ELとも、「光沢感」「明るさ」「鮮やかさ」「華やかさ」はLEDで、白熱電球との間に有意差はなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時は、2017年度は(1)築50年以上の公共建築物のリストアップ、(2)各物件の図面、照明器具仕様・設置図面・照明設備の改修履歴に関する資料収集、(3)各種光源の発光効率変遷と(4)空間照度の変化推定、(5)各用途建物のJIS照明規準の変遷調査、(6)調査可能な物件3-4件の現場実測、(7)模型による内装材の印象評価実験、(8)実環境での印象評価実験と模型実験の確からしさの確認、を計画として挙げていた。 このうち、(1)(2)(3)(4)(5)(7)については実施できた。(6)(8)の現物調査、現地での被験者実験については未着手である。
|
今後の研究の推進方策 |
2018年度は、2017年度に実施した内容について、調査対象物件を増やし、内容の充実を図ることに主眼を置いているが、まずはじめに、現場実測が可能な物件を確保する。現物での被験者実験の結果と、模型やCGによる被験者実験結果を比較することで、模型・CG実験の限界を探ると共に、現物にて被験者実験ができない場合にも、模型実験で対応可能な内容については、模型実験による評価の充実を図る。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2017年度中に3Dプリンタを購入し、3Dプリンタで作成した模型を用いた評価実験を予定していたが、現場実測を実施できる物件が見当たらなかったため、現物を3Dプリンタで再現した評価実験よりも、評価対象の内装材の種類を増やし、簡易な模型実験を優先的に行った。 2018年度は、現場実測、現場評価できる物件を確保すると共に、現場評価と模型評価の対応を比較するため、2017年度購入しなかった3Dプリンタを購入し、3Dプリンタを用いた縮尺模型実験を実施する計画である。
|