研究課題/領域番号 |
17K06678
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
佐野 奈緒子 東京電機大学, 未来科学部, 研究員 (80376508)
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研究分担者 |
秋田 剛 東京電機大学, 未来科学部, 教授 (40318168)
土田 義郎 金沢工業大学, 環境・建築学部, 教授 (20227424)
古賀 誉章 宇都宮大学, 地域デザイン科学部, 准教授 (40514328)
宗方 淳 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (80323517)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 共在性 / 共在感覚 / インタラクション / テレイグジスタンス / 視聴覚環境 / 引き込み |
研究実績の概要 |
研究計画に従い、①視聴覚情報伝搬装置の構築、②『共在感覚』に関わると予想される環境情報の絞り込みを行った。①については、 2室間に設置可能な音声・映像の入出力システム『擬似窓』を構築した。構築したシステムは、マイク・ビデオカメラから入力した音声・映像をPC内で画像フィルタ・出力遅延プログラムにより加工し、モニタ・スピーカから出力するシステムを双方向で構築し、同期をとるものである。②については予備調査として、日常生活で感じられる『共在感覚』についてディスカッションを行い、『共在感覚』の環境側の手がかり情報のうちテンポ情報に着目した。『擬似窓』システムの片方向を用い、モニタ・スピーカからテンポの異なる視聴覚刺激を呈示し、これらの視聴覚刺激のある環境に対する印象評価をさせた。媒体を映像、音、映像+音とする 3種類の実験を行った。 その結果、テンポを刻む聴覚情報がある環境下で自発的に発声を行なっている場合、800ms程度のテンポで同じ場にいる感覚が高くなる傾向が認められた。2者間の発話の間合いが800ms程度であることから、人と人のインタラクションにみられるテンポ情報が、同じ場に居る感覚を生じさせる環境情報要因である可能性が考えられる。 また、実空間での2者間のインタラクションと場の関係について検討するため、場を構成する環境条件として対人距離に注目し、2者間の距離、2者の向き、インタラクションの有無(じゃんけんをする、しない)において、主観評価及び体動の加速度測定を行った。主観評価の結果、距離の延長とともに同じ場に居る感覚は弱まるが、じゃんけん時にその傾向は抑制されることがわかった。また2者間の体動に相互相関が認められ、その時間遅れや周期性に、距離、向き、インタラクションの有無による異なる特徴が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書で示した視聴覚情報伝搬装置の構築、及び『共在感覚』に関わると予想される環境情報の絞り込みを行うことができたため、概ね順調に進展していると判断される。主観評価実験の結果、人の会話や動作に関わるテンポ情報のある環境で自身も行動することで、主観的には『共在感覚』を得られている可能性が示唆され、その際音声情報が視覚情報より『共在感覚』を高める傾向が認められている。また実空間でのインタラクション実験では環境情報(この場合個体間距離)の変化により個体間の動作の相互相関(引き込み)が変化している。さらに『共在感覚』とは何かという点についてメンバー間で議論を行い、その結果、人の存在の認識→コミュニケーション可能である状況、の2段階の認知構造が仮説的モデルとして得られている。住空間における視聴覚環境による共在性の構築においては、以上から体動や会話に近いテンポ情報、聴覚的手がかり情報により人の存在の認識→コミュニケーション可能である状況の判断を経て『共在感覚』が得られるという仮説的モデルが立てられる。今後は仮説の検証のために、主観評価だけでなく体動の引き込みという観点から『共在性』の成立を検討していく。
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今後の研究の推進方策 |
テンポ情報の伝達に注目した『共在性』成立に関わる視聴覚情報モデルの構築を行う。平成29年度に作成した『擬似窓』システムにより、視聴覚により伝達されるテンポ情報と個体間の体動の引き込みと主観的な『共在感覚』の関係について検討する。その際、テンポ情報の『共在性』情報伝達性能について検討するために、『擬似窓』により体動、音声の伝達を遅延させる条件についても検討する。また生理応答として脳波、体動の加速度測定を行い、離れた室空間で『擬似窓』システム越しに過ごす場合の体動の引き込みや気分について測定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
音声・映像の入出力システム のうち、基本的な仕様に絞り構築したため、次年度使用額が生じている。今年度は前年度に行った実験結果に基づき、音声呈示システムを中心にシステムを拡張する。
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