研究実績の概要 |
本研究の目的は、重度の体温調節障害(ほぼ全身に及ぶ発汗障害、血管運動障害、熱産生障害、温冷感麻痺など)を持つ9名の頸髄損傷者(以下頸損者)を、人工気候室内で9つの環境条件(室温22℃-相対湿度40, 50, 70%、室温24℃-相対湿度40, 50, 70%、室温26℃-相対湿度40, 50, 70%)に90分間曝露し、それらの温熱生理心理反応のデータと、1975年から行ってきている過去の人工気候室実験のデータ(結果)を合わせ、標準着衣量0.6clo(春季と秋季の季節に対応する中間期の着衣の断熱性能に相当)における頸損者の至適温湿度範囲を求めることである。 研究成果は、ほぼ全身の温冷感が麻痺している当事者とその介護者にとって、室内温湿度を調節する際の判断材料となり、また建築設備設計技術者にとっても、頸損者が使用する可能性のある公共施設の空気調和設備を設計する際の資料として利用できる。研究成果は、頸損者のQOL向上に繋がるものと信じている。 9名の頸損者のうち、5名の頸損者については既に人工気候室内で9つの環境条件に曝露され、実験を終えている。残りの4名の頸損者については、6つの環境条件(室温22℃-相対湿度40, 70%、室温24℃-相対湿度40, 70%、室温26℃-相対湿度40, 70%)への曝露が残されており、令和2, 3年度に人工気候室実験を行う予定であったが、新型コロナウイルス感染症の影響により実験を延期することになった(令和2, 3年度と2年連続で実験を行うことが出来なかった)。 9名の頸損者は全員、相対湿度50%での温度条件下(22, 24, 26℃)での人工気候室実験は終えている。そこで、これらの実験結果と、過去の人工気候室の結果を合わせ、中間期且つ相対湿度50%における頸損者の至適温度範囲について検討した結果、25±1℃と推定された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
前述の通り、9名の頸損者は全員、相対湿度50%での温度条件下(22, 24, 26℃)での人工気候室実験を終えている。しかし、9名中4名の頸損者は、 6つの環境条件(室温22℃-相対湿度40, 70%、室温24℃-相対湿度40, 70%、室温26℃-相対湿度40, 70%)への曝露が残されており、令和2, 3年度に実験を行う予定であったが、新型コロナウイルス感染症の影響により実験を延期せざるをえなかった。 実験延期の具体的な理由は、人工気候室内は常に換気は行われているが、被験者である頸髄損傷者と実験補助者である学生が実験室内で隣り合わせに配置されてしまうため、一般健常者より免疫が劣る頸損者の新型コロナウイルス感染症への罹患の危険性を考慮したためである。
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