研究課題/領域番号 |
17K06686
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研究機関 | 大手前大学 |
研究代表者 |
山下 真知子 大手前大学, 現代社会学部, 教授 (40461975)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 心理印象評価 / 色彩環境 / ヒトの味覚・嗅覚 / 空間の広・狭感 / 記憶 / 時間的体感 / 立体可視化装置(π-CAVE) |
研究実績の概要 |
本研究は、日本最大級の立体可視化装置(π-CAVE)での色彩環境における心理調査に取組むもので、これまでの心理評価調査とは異なる新規の実験方法をとるものである。既往研究として視覚から色彩を捉えることで想起される人間の感情に及ぼす影響に関する実証を経て、五感(味覚・嗅覚)や空間の広・狭感、記憶、時間的体感など色彩空間がヒトに及ぼす認知的な問題に迫る。本研究成果により、まだ十分に解明されていない色彩心理効果の定説の裏付けと吟味検討を含めて、抜本的に新しい知見を見出すことが目的の一つである。 前年度迄の研究実績1.2.3.を経て2018年度計画とした4.色彩空間による味覚、嗅覚、広・狭感の印象評価、5.記憶、時間的体感の印象評価に関する実験を実施した。結果、各実験項目に於いて、空間での広・狭感(434回答)、記憶(619回答)、時間的体感(335回答)など相当量の回答数を集積することができた。とりわけ実績成果の一部分だが「空間の色彩がひとの記憶に及ぼす影響について」の結果、最も正答数平均値が高い「黄赤」空間次いで「青」、「緑」、「赤」、「紫」「黄」である。「赤」空間と「青」空間の比較では正答率上位は「赤」空間の方が「青」空間より多く、「赤」空間は正答率下位が少ない。室内色「赤」と「青」の生理的・心理的効果の定説では「赤」は興奮色といわれ、「青」は鎮静色といわれる。また、巷ではまことしやかに「赤」は認知機能が低下する色、「青」は集中力がアップする色といわれている。本実験においては「赤」も「青」も記憶・集中に関する結果にほとんど差はなく、定説は必ずしも正しいとはいえないことが明らかになっている。 本研究は、2017年(平成29年)~2018年(平成30年)に収集したデータを基に科学的実証を試みようとしており、2018年(平成30年)までの研究計画は順調に推移したと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実績の概要でも示したが、各実験項目に於いて、6色相に絞った空間での嗅覚・味覚、記憶、広・狭感、時間的体感に関するデータ数はまずまず当初の計画以上に集積することができた。 とりわけ、当初の2018年度(平成30年度)の実験計画では、記憶に関する実験において、第1期(2017年(29年)7月~9月初旬)の実験で、実験対象となる6色の空間色彩のうち3色で実施し、30年度に第2期として、残りの3色を同被験者に対して実施する予定であった。しかし、データの信頼性を確保するために第1期実験から第2期実験との時間差を最小限に抑えることが肝要であると判断し、2017年(29年)12月~2018年(30年)2月中に前倒しで実験を実施した。 2018年(30年)4月以降は各実験で相当数得た回答データ数の集計及び解析を進め、研究結果を纏める段階である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策とし今後の研究推進の策については、現在のところ、集積した相当数のデータを確認しながら集計しているが、不備は認められていない。さらに、このまま分析作業に取り組み、その都度明らかになった事柄を学会等で発表しつつ、色彩環境に於ける色彩心理効果の定説の検証を含めて、抜本的な新しい知見を書籍等で明らかにする予定である。 これにより、本研究目的の第一義である子ども、高齢者、障害者の自助支援や施設での生活の質向上に向けた施設設計における有効な指針の提示が今後の施設リノベーションに活用されることを目指す。 またそれらの一環として、福祉・教育施設の色彩設計に関する事例調査を計画している。高福祉国家といわれるドイツ、QOLが高水準であると言われるオーストリアなどの福祉・教育施設の事例から学ぶべき点を含めて、研究成果を著書で発表する準備に取り組む計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験施設の使用料が発生しなかったことによる。また、実験の手順上、実験計画を前倒しで実施したことによる実験協力者への謝金が発生したことによる。
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