本研究は、日本最大級の立体可視化装置(π-CAVE)での色彩環境における心理調査に取組むもので、これまでの心理評価調査とは異なる新規の実験方法をとるものである。既往研究として視覚から色彩を捉えることで想起される人間の感情に及ぼす影響に関する実証を経て、五感(味覚・嗅覚)や時間的体感、空間の広・狭感、記憶など認知的な問題に迫り、まだ十分に解明されていない色彩心理効果の定説の裏付けと吟味検討を含めて、抜本的に新しい知見を見出すことを目的の一つとした。研究は以下の(1)~(4)の通り、当初提示した計画以上に滞りなく進捗することが出来た。 (1)実験用立体可視化装置として色彩空間モデルの開発、(2) 6色相に絞った色彩空間での実験により、味覚、嗅覚、広・狭感、時間的体感、記憶の印象評価の十分なデータ数を集積分析した、(3)本研究で得た色彩環境に於ける色彩心理効果の定説の検証と抜本的な新しい知見は、その都度、学会で発表、(4)本研究の一環として、福祉・教育施設の色彩設計に関する事例調査として高福祉国家といわれるドイツ、QOLが高水準であると言われるオーストリアなどの福祉・教育施設の事例調査から学ぶべき点を得た。 今後はこれらの内容の全ての研究成果を一般の方々に分かりやすい著書で発表するための学術書助成申請を行う計画である。
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