研究実績の概要 |
老齢化に伴い生理機能は低下すると一般的にいわれており、高齢者は、空気の乾燥による皮膚や粘膜での状態の変化について、違和感と捉えることが遅くなるだけでなく、人体表面の水分含有量の低下にも気づきにくい恐れがある。本研究では、高齢者の低湿度環境における健康リスク低減の観点から、皮膚乾燥疾患予防のための室内空気衛生環境条件を調査し、乾燥感の生じるメカニズムの解明を目指すとともに、乾燥による不快感や疾患の生じにくい室内湿度環境の形成に資するエビデンス構築を目的としている。 高齢者を主として行った実験室を用いた生理要因(皮膚含水率, 皮膚表面温度)の測定と心理要因(湿度に関する快適感, 温冷感等)の申告では、湿度に関する快適感申告の結果から、高齢者以外の被験者が空気の乾燥を不快と感じる場合でも、同様の状況を高齢者は快適と捉える可能性のあることが確認された。また、皮膚含水率と湿度に関する快適感申告の結果から、高齢者は不快と申告していないにも関わらず、低い皮膚含水率となっている場合があることが確認された。一連の結果から、老齢化に伴い、空気の乾燥により皮膚や粘膜の状態が変化し、人体表面の水分含有量が低下していることに気づきにくく、違和を感じることが遅くなっている可能性を捉えることができたと考える。 生活の場における継続的な調査からは、高齢者自身で室内の温湿度や皮膚の状態を計測機器の表示などにより確認しその状態を改善しようと試みる行動などを通じて、皮膚乾燥の予防に寄与することが確認できたと考える。
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