研究課題
東日本大震災を契機として、改めて地方の量産住宅のあり方が問われている。100年以上プレファブリケーションの仕組みが保たれているイギリスの植民地住宅「バンガロー」を対象とし、インドを起源に産業化されたイギリス、オーストラリア、アメリカを比較しながら、その産業化の過程と現代における価値再生産の可能性を明らかにする。1)黎明期におけるバンガローの特性把握、2)建築形式の類型化、3)産業化過程における3ヶ国の生産システム比較、4)現代における保存・活用の実態把握、の4段階から、現代における量産住宅の価値再生産の方法に迫る。最終年度となる今年度は、これまでに調査を行ってきたインド・イギリス・オーストラリアにおけるバンガローの成立背景と建築的特徴の比較を行い、研究成果の一端をまとめた論文として国際学会で発表を行った。そこでは、バンガローは思想、技術・構法、材料において地域性を有しているが、各国のバンガローの共通性はその建ち方と間取りの発展形態に、相違性はヴェランダの意味と機能、地域性の表れる対象としての実態の空間にあることを示した。後半は、未調査であったアメリカについて、バンガローが集中して現存しているカリフォルニアおよびシカゴを中心に現地調査を行った。カリフォルニアではPomona地区に建設された19世紀半ばの入植者住宅の図面資料を入手し、19世紀後半にバンガローのエリアが形成されたPasadena地区について市による建築調査目録をもとに現況を確認した。また、シカゴでは20世紀初頭に建設されたBungalow Historic Districtsの現況およびバンガローの間取りを確認した。しかし、アメリカにおけるバンガローは広範に分布しており、現存しないものも多く、資料が多量に分散していることから全体像を捉えることが難しく、地域間の影響関係や生産システムを明らかにするには至らなかった。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
Proceedings of the Society of Architectural Historians, Australia and New Zealand
巻: 36 ページ: 402-414