研究課題/領域番号 |
17K06696
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
中山 茂樹 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (80134352)
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研究分担者 |
鈴木 弘樹 千葉大学, 大学院工学研究院, 准教授 (50447281)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 精神科救急病棟 / 隔離室 / 保護室 / 行動制限 / 部分開放 |
研究実績の概要 |
精神科救急・急性期医療における高規格病棟を想定する病棟内環境のうち、特に隔離室およびその周辺ゾーンに焦点を当て、行動制限解除に伴う患者の行動拡大の可能性を探った。対象は救急入院料病棟22である。 隔離ゾーンは病棟全体の6~25%程度(平均16%)の面積を占め、多くの場合は病室以外の専用デイコーナーを有する。なお、隔離室の割合は10~30%(平均22%)の間に分布し、隔離室も含めた個室数は50~100%(平均70%)までの範囲であった。 隔離室から、行動制限解除を受けて病棟全体の共用空間(デイスペース)までに広がるの患者の行動場面をステージとして各空間の機能(隔離室・隔離前室・準隔離室・廊下)と日常的な行為である洗面・入浴・休息(食事)を行なう位置・場所・設備に着目し、関係付けてまとめ、類型化を行なった。その結果6つのタイプに分けることができた。これらの違いは、そのステージごとに獲得できる行為数と、その順序である。つまり、たとえば洗面行為は前室で行なえる型と、隔離ゾーン共用空間に出ないとできない型がある。これらの獲得できる行為がきめ細かく配慮されていると、部分開放(時間開放)として隔離室から出られる可能性が増すと考えられる。少なくとも行為の獲得順序については、治療的な概念もあり、各病棟ごとにクリニカルパスなどで示されているものであるが、それらに対応して建築空間が用意されているとは限らない。反対に、物理的な空間整備が患者の行動制限解除に影響(制約)を与えていることも考えられる。 今後、実際の制限解除の状況を追跡調査により把握し、また隔離ゾーン内共用空間での行為観察などを行ないながら、建築性能に求められる治癒的機能を追及する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
対象としているのは精神科救急病棟であり、既に「施設基準」として定められている条件があので、一定の質を担保している病棟建築を対象としている。とは言え、隔離室を治癒装置として利用するというからには、そこからの制限解除も念頭に置かれた計画となっているべきであり、これらの条件は「基準」には触れられていない。 これまでの研究により、病棟建築の実際にはさまざまな状況があるので、対象をさらに広げる必要も明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
初年度研究により患者の行動範囲拡大に関する現状は把握できたが、これらの作業は図面分析により得られた情報である。今後は、診療録等の分析による実際の部分開放の状況を明らかにし、また行動観察を加えて隔離ゾーン共用空間の建築・設備に必要な条件を整理する予定である。また、これまでに対象とした病院以外の精神科病院についても部面分析は継続する必要もある。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまでの研究活動は図面収集とその内容の確認に要した旅費がおもであったが、次年度以降は患者の行動記録調査などを実施するので、そのための旅費および調査協力者への謝金等が発生するので、合算して使用する計画である。
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