研究課題/領域番号 |
17K06696
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
中山 茂樹 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (80134352)
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研究分担者 |
鈴木 弘樹 千葉大学, 大学院工学研究院, 准教授 (50447281)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 精神科救急病棟 / 隔離室 / クリニカルパス / 段階的空間構成 / 精神科高規格病棟 |
研究実績の概要 |
精神科救急病棟をはじめとする精神科の急性期患者を対象とする病棟では、多くの患者が、まず隔離室に入院し、行動制限を受ける。もちろんこれは自傷・他害などを回避する必要からではあるが、一方、対人関係の改善など治療上の意味からは、徐々に行動制限を介助する必要があり、クリニカルパス上でもそのように示されている。しかし、多くの病院の隔離エリアでは、隔離室を出て対人関係を構築できるような日常生活が行なえる空間や設備が用意されていない。これらを改善することが本研究の目的であるが、今年度は国内の32の救急病棟から平面図およびクリニカルパスを収集し、患者のパスに従って拡大する患者の日常生活行為の広がりの具体的な空間場所およびその状況を分析した。 クリニカルパスより患者の生活行為を17抽出し、それらが入院経過後のどの時期にどこで行なわれるかを類推した。また、パスより、隔離エリア内における病状回復のステージとして、拘束期・隔離期・臨界期・開放期(・退院準備期)の4(5)期に分けることとした。これにより各期(ステージ)のどの段階で行なわれている行為を整理することができた。拘束期と隔離期が隔離室内、臨界期には保清行為や職員との交流が行なえる空間であり、行動制限解除のきっかけとなるが、それらに必要な空間と設備をどこに配置すべきかを明らかにできた。 さらに、隔離エリアにある生活空間のつくりようによって、行動拡大のパターンが異なることが明らかになった。隔離室から徐々に生活行為を獲得していくそのプロセスには空間構造によって、前半飛躍型、段階型、後半飛躍型、中間飛躍型の4類型があることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度中に図面上の分析だけでなく、隔離エリアにおける患者行動の実際を追跡調査する予定であった。これには患者の個人情報が含まれる可能性があり、研究者が所属する研究機関における倫理審査を申請しているが、調査手法についての修正事項が指摘され、調査を実施することができなかった。既に調査対象機関(病院)における承認は得ているが、場合によっては当該機関での倫理審査申請を求められる可能性もある。 倫理審査委員会との協議により早急に調査に着手できるよう、努めているところである。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度中に実施を計画をしていた隔離エリア内のいける患者日常行為追跡調査を実施する。併せて、当初計画していた通り、隔離エリアから一般病床に移り、退院にいたる一連の病室処遇の追跡(記録による)を実施する。 精神科における高規格病棟の基本条件として、隔離室数と一般病床数のプロポーション、それぞれのエリアにおける患者生活行為を担保する空間と設備の条件を明らかにする。 新たに着手する記録追跡調査についても、既に研究倫理審査を申請しているが、患者情報の取扱い、病院の記録をどこまで病院外研究者が閲覧できるかについて、倫理審査委員会と鋭意協議している。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗状況欄に示したとおり、2018年度に実施を予定していた病院訪問の上の患者追跡実態調査が倫理審査上の課題により遅れたため、当該調査は次年度に実施することとなった。 ここで必要な研究費は、調査員の派遣旅費および謝金である。調査は精神科救急病棟の5か所を計画し、既に2か所からは調査許可を得、3か所については依頼中である。
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