タイについては昨年度抽出した縮小自治体を対象に、アンケート調査とフォローアップインタビュー調査を実施した。アンケートは県自治体16自治体、市町自治体78自治体、バンコク特別区21区から回答があった。その結果、以下のことが明らかになった。多くの人口減少自治体において、人口減少という状況下にありながら危機感は薄く、自治体の計画において人口減少に関する記述は稀である反面、高齢化に関しては多くの自治体で危機感を持っている。人口減少の主要な要因は地方部においては、若年層の進学や就職、産業の衰退によるものが多く、バンコクにおいては、地価の高騰や環境問題などであった。また、人口減少による課題に関しては、地方部では労働力の不足、消費の縮小などであり、バンコクでは外国人住民の増加に伴う衝突などであった。 中国に関しては、まず人口、経済、市街地の観点の内いずれかが縮小している縮小都市196都市を抽出した。そして、それを人口、市街地面積から、Balanced shrinking city(9都市)(人口も市街地面積も縮小)とUnbalanced shrinking city(187都市)(人口/経済は縮小、市街地面積は拡大)に分類した。このように、中国の縮小都市の大部分は、人口や経済が拡大しているにも関わらず、市街地が拡大し続けていることを明らかにした。続いて、Unbalanced shrinking cityのうち、人口、経済は縮小しているにも関わらず、市街地は拡大している、銀川市、洪湖市、長安鎮を対象として、事例研究を実施した。事例研究の結果、人口、経済縮小の要因、人口分布の変遷、人口減少地区の立地特性などからunbalanced shrinkingに至ったメカニズムを明らかにし、さらにunbalanced shrinkingによって生じた課題を明らかにした。
|