研究実績の概要 |
最終年度には以下2点を実施した。 1. 通り両側町家の相互作用が通り沿い並びの相隣関係へ展開する要因の把握 城下町〈高田〉と湊町〈直江津〉における夏季祭礼、城下町〈高田〉と街路村〈稲田〉における冬季雪処理について、通り両側町家の相互作用が通り沿い並びの相隣関係へ展開する過程を連続平面図と通り断面図に記録した。夏季祭礼と冬季雪処理を比較することにより、私領域に属する雁木が公共性を獲得する根拠を解明した。 2. 柳川の堀割水路との比較による私領域の空間要素が公共性を獲得する根拠の解明 連携研究者の菊地が福岡県柳川市の〈宮永町〉と〈京町歩道〉において屋敷構えの変容過程の分析から堀割水路の居住システムを明らかにした(菊地:日仏景観会議, 2007)。連携研究者にデータ開示を依頼し、上越市〈高田〉と〈直江津〉と〈稲田〉で図化した雁木通りの居住システムと比較検討した。これにより日本における伝統的な街路・水路空間において、私領域に属する屋敷構えの要素が都市空間の構成要素として公共性を獲得する根拠を把握した。 研究期間全体を通じて実施した研究の成果として、城下町〈高田〉の直江八幡宮の春季と秋季の祭礼における町家・雁木・通りの場所と住人相互の機会を氏子町内全域の平面図と断面図に記録した。これにより城下町〈高田〉と湊町〈直江津〉に共通して神輿巡幸時につくりだされる機会と場所と行動を把握した。城下町〈高田〉と街路村〈稲田〉について、実測した通りの両側の雁木町家の連続平面図と断面図に機械化前と機械化後の雪処理過程を聞き取りにより記入し、街路幅員の比較的小さい城下町〈高田〉の両側雁木町家の雪処理過程と、商家と農家が街路・水路をはさんで向かい合う〈稲田〉の雁木町家の雪処理過程それぞれにおいて、通り両側町家の相互作用が通り沿い並びの相隣関係へ展開する空間上の要因を把握した。
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