研究課題/領域番号 |
17K06701
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
稲上 誠 名古屋大学, 未来社会創造機構, 研究員 (40597803)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 枯山水庭園 / 感性評価 / 生体反応 / 複雑さ / 不均衡性 |
研究実績の概要 |
新型コロナウイルス感染症の流行により,予定していた本実験を行うことができなかったため,研究期間を再延長することにした.その間に,主に生体反応に関する文献を調査し,実験内容について更に検討を進めた.実験美学の基礎的な理論であるバーラインの理論では,芸術作品に対する感性的な反応について,鑑賞者の覚醒度という点からモデル化している.その覚醒度を生体反応に基づいて検討した文献では,心電や皮膚電気活動を計測した実験が多く報告されていた.そこで,皮膚電気活動(皮膚コンダクタンス水準,皮膚コンダクタンス反応)を計測する装置を購入し,動作確認のための予備的な計測を行なった.その結果,体の動きによるノイズの影響が小さく,画像の提示による反応がデータに表れることが確認できた.以前から使用している生体計測装置と組み合わせることで,脳波(2カ所のみ),眼電位,心電,皮膚電気反応が同時に計測できるようになった. 以上の実験の準備と並行して,これまでの実験で得たデータを別の方法で分析し,その結果を国内外の学会で発表した.実験美学では,画像の主観的な複雑さが,圧縮ファイルのサイズ(データ容量)と相関することが示されている.その知見を庭園の画像に適用した結果,中程度の強さではあるが,有意な相関があることを確認できた.また,禅の芸術では不均衡が美を生み出すと言われている.そのことを検証するため,庭園の画像の重心位置に基づき不均衡性を定量化し,美しさの評価との関係を分析した.その結果,均衡が適度に崩れている時に,美しさが最も高くなることが明らかになった.以上の結果は,日本の独自の美に関する科学的な知見として,学術的かつ文化的に意義があると言える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の流行により,本実験を行うことができなかった.生体反応を計測する実験では,電極の取り付けの際に参加者に接触することが避けられず,安全性を確保することが難しかった.
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今後の研究の推進方策 |
倫理審査委員会に承認され次第,新型コロナウイルスへの感染対策を十分に行なった上で,本実験を行う予定である.実験者と参加者はマスクを着用し,定期的にアルコールで手指の消毒を行う.参加者が触れるものについても,実験の前後に念入りに消毒する.
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度に予定していた実験を次年度に行うので,参加者の紹介のための費用と謝金として使用する.
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