研究課題
本研究は、低未利用となった産業跡地における環境再生および旧産業景観の形成におけるパートナーシップと維持管理について、明らかにすることを目的としている。2017年度は、最も多い産業跡地を有する英国北西部において森づくりを進める機関であるマージーフォレスト、関連する行政機関担当者、地域団体へのヒアリングと現地調査を実施した。研究計画に挙げていたノースウィッチウッドランズに加え、同様の事例を有するセントへレンズについても比較対象として調査を行った。これらの2事例は、産業跡地において環境再生が行われ、敷地の一部では保護地区の指定を受けるなど質の高い維持管理が行われ、住民にとっての緑地をつくりだしている点で共通する。岩塩や塩水の産地として知られるノースウィッチウッドランズにおいては産業遺産、炭鉱やガラス工業の町として知られるセントへレンズでは住民との協働によるアートプロジェクトに焦点をあてた取り組みが行われている。これらの2事例の比較検討について、2018年度において学術論文としての公表を行った。これらの2事例におけるパートナーシップについては、住民や地域団体とともに活動が行われ、緑地におけるイベントの企画実施や維持管理への参加や支援が行われ、新たな文化や価値の創造につながる可能性があることが伺える。これらの事例を含めて、今後においては、公的資金のみでなく民間資金の可能性も検討しつつ、さらに長期にわたる公園緑地の維持管理の方針の検討が課題として挙げられる。2018年度に、上記2事例のみでなく、英国北西部において環境再生に取り組む関係者にもヒアリングを行っており、旧産業景観の形成のみでなく、関連施策や地域づくりへの影響についても明らかにすることを目標としている。これらの成果の一部については、2018年度に学術論文として公表ずみである。
2: おおむね順調に進展している
当初計画予定に挙げていた産業跡地における環境再生の過程に関する調査を実施し、国際会議での発表および学術論文による公表ができたため、予定どおり順調に進捗している。これまでの調査結果の分析およびとりまとめを行うことで、当初の目的を達成することが可能と考える。
今後は、本研究テーマに関連して、長期的な観点による維持管理の方針およびパートナーシップ形成に関する調査を行うとともに、新たな文化や価値の創造につながる可能性も含め、産業跡地における環境再生が地域にもたらした評価および変化に着目して調査分析を進めることとする。2019年度においては、ノースウィッチウッドランズやセントへレンズの事例からこれまでの調査から明らかになった結果および今後の課題を取りまとめ、所属学会および国際会議での発表を行うとともに、国際学術雑誌への投稿をめざす。また、これまでの過去3年間で得られた知見をもとに、今後の取り組みへの提案を行うことを目標とする。2018年度においては、これらの2事例のみでなく、英国北西部において環境再生に取り組む関係者にもヒアリングを行ったことから、旧産業景観の形成のみでなく、関連施策や地域づくりへの影響についても明らかにすることを目標としている。これらの成果の一部については、2018年度に学術論文として公表ずみである。本研究の最終目標は、旧産業地域において環境再生が行われた緑地の長期的な維持管理に向け、旧産業景観の形成におけるパートナーシップ形成の手法の重要性と参加型による維持管理の取り組みが英国北西部における地域間をつなぐ広い意味での地域づくりにも果たす役割について明らかにすることである。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
International Journal of GEOMATE
巻: Vol.16, Issue 54 ページ: 9-15
https://doi.org/10.21660/2019.54.4534
巻: Vol.15, Issue 48 ページ: 48-54
https://doi.org/10.21660/2018.48.7125