研究課題/領域番号 |
17K06708
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
中島 美登子 香川大学, 工学部, 講師 (30413868)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 都市計画・建築計画 / 人間生活環境 / 社会系心理学 / 社会福祉 / 高齢者 |
研究実績の概要 |
本研究ではコミュニティの継続性という点で異なる大船渡市内の5箇所の災害公営住宅、5箇所の災害公営住宅、2箇所の防災集団移転地、そして2箇所の集約化された仮設住宅それぞれについて、A. 高齢者の社会関係や交流関係の変化を通じて住み替えが高齢者に与えた影響を明らかにし、次いでB.移転先地域社会のコミュニティ活動の解明を通じて高齢者の受け皿としての地域社会の役割を明らかにする。そしてC.高齢者サポート拠点と支援員の活動内容を検討することでそれらの役割を明らかにする。そして、これらA,B,Cの総合的な検討を通じて、D. 仮設後の高齢者の孤立化防止と、高齢者支援の地域的ネットワーク構築の可能性についての検討を行う。 1年目は住み替えに伴い地域コミュニティが解体されたJ集団移転地と地域コミュニティが維持されたK集団移転地という地域コミュニティの状態が異なる2つの集団移転地を対象とする。その結果、1)地域コミュニティが維持されたK集団移転地では高齢者の既存の交流関係が維持されていた一方で、地域コミュニティが解体されたJ集団移転地では多くの高齢者が交流関係を喪失していたこと、2)K集団移転地では活発な地域活動が行われ高齢者も積極的に地域活動に参加していた一方で、J集団移転地ではそうした地域活動がほとんど行われておらず高齢者の参加も見られなかったこと、3)特にJ集団移転地の高齢者においては移転前に暮らしていた仮設住宅に設置された高齢者サポート拠点や仮設住宅支援員へのニーズが依然として高いことが明らかとなった。 以上のことから、仮設住宅から防災集団移転地への住み替えにおいては可能な限り既存の地域コミュニティを維持することが高齢者の孤立化防止には必要であること、既存の地域コミュニティを失った移転地においては高齢者サポート拠点や支援員など高齢者の交流を促進する支援が必要であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目は5つの災害公営住宅、2つの集団移転地、2つの集約化された仮設住宅の全戸を対象とするアンケート調査を行った。(調査内容は以下を参照)。主な調査は夏休みおよび冬休みの学期休み期間を利用して行うとともに、並行して調査の合間に高齢者世帯を中心に各戸を訪問して傾聴ボランティアを行い、信頼関係の構築に務めた。また、それぞれの仮設住宅や災害公営住宅に併設されている集会所及び高齢者サポート拠点の利用実態を観察するとともに、自治会役員や支援員の活動内容について聞き取りを行った。移転先の住宅において研究成果を3月に報告するとともに、大船渡市役所にも報告している。 【アンケート調査】の内容(全戸)入居者の属性、家族構成、前住地→避難所→仮設住宅→災害公営住宅等の移行過程、交流の継続性、自治会活動への参加の有無、集会所の利用実態と集会所利用のニーズ(高齢者)震災前後の交流状況、要介護度、介護支援の利用の有無および、介護への要望 【調査スケジュール】5月連休: 災害公営住宅(A,B,K,M,S)、集団移転地(M,S)、集約化された仮設住宅(A,J)への挨拶回り(調査のお願い)と大船渡市役所での資料収集を行った、8月~10月:アンケート調査の配布と回収(全戸対象)を行った。3月:補足調査(アンケートの回収漏れの補足)およびインタビュー対象世帯の抽出・お願いを行っている。
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今後の研究の推進方策 |
これからは引き続き、高齢者サポート拠点の活動を理解するために調査を進め、コミュニティの状態と福祉サービスに違いがみられる5つの災害公営住宅、2つの集団移転地、2つの集約化された仮設住宅において、高齢者サポート拠点による福祉サポートの活動が高齢者の交流の内容にどのような違いをもたらすのかを明らかにするための調査を行いたいと考えている。移転先の各住宅において研究成果を3月に報告し、大船渡市役所にも報告する。 (平成30年度の計画)最終年も継続して高齢者世帯および支援者を中心にインタビュー調査を行いたい。(調査内容は以下を参照)。 【インタビュー調査の内容】(高齢者)震災前後の外出行動と交流状況の詳細、余暇活動・趣味活動の状況、集会所の利用(支援者)支援の具体的な内容、支援を行うようになった経緯、支援活動の運営状況(集会所の支援員、高齢者サポート拠点スタッフ)活動内容についてのインタビュー調査 調査スケジュール(30年度):5月連休:インタビュー調査 (災害公営住宅:A災害公営住宅,B災害公営住宅)、8月~9月:インタビュー調査(災害公営住宅:K災害公営住宅,M災害公営住宅,S災害公営住宅) 12月:補足調査(インタビューの不足分) 3月:報告会の開催 (31年度) 5月連休:インタビュー調査 (集団移転地:J集団移転地,K集団移転地、)、8月~9月:インタビュー調査(集約化仮設:A仮設,J仮設) 12月:補足調査(インタビューの不足分) 3月:報告会の開催、
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額2,979円が生じたが、この理由は物品費で支出した額が279371円となり、これは封筒費や紙代などをまとめて購入した結果、当初予想していた30万より少ない額であったためである。この2,979円に関しては、次年度の物品費で再度、使用したいと考えている。
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