研究課題/領域番号 |
17K06708
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
中島 美登子 香川大学, 創造工学部, 講師 (30413868)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 都市計画・建築計画 / 人間生活環境 / 社会系心理学 / 社会福祉 / 高齢者 |
研究実績の概要 |
地域コミュニティが解体されたJ集団移転地と地域コミュニティが維持されたK集団移転地という地域コミュニティの状態が異なる2つの集団移転地を対象として調査を行った。J高台とK高台はどちらも同市内のR地区に位置し、津波により被災した元のA,B,C,D,E集落の住民が集団移転したものである。J高台の戸数は23戸、K高台は12戸で、どちらも震災から4年後の2015年2月及び3月に入居を開始した。しかしながら、この2つの防災集団移転地の特徴はK高台は全員が元のA集落の住民であるのに対し、J高台の住民はB,C,D,Eの4集落の住民によって構成されている。K高台はその造成地内に公民館が建設され,元のA集落の自治会がそのまま継承されているのに対し,J高台は公民館も建設されておらず,自治会も組織されていない。コミュニティの交流状況については,K高台では仮設住宅からの知り合いが多く,近隣の住民同士の交流も活発であるのに対し,J高台では仮設住宅からの知り合いもいるが,お互いに知らない人も多く,隣近所での交流はあまりできていない。また,J高台の高齢者の一部はJ高台から16kmほど離れたS地区に位置するS高齢者サポート拠点をしばしば利用しているが,K高台の高齢者は全く利用していない。 仮設住宅から防災集団移転地へと至る移転プロセスにおいては用地取得や移転の計画策定、合意形成という点で大きな違いが見られた。そうした違いは移転後のコミュニティの維持・形成状況に大きく影響し、必ずしも集落としての一体性やコミュニティのまとまりを持たない防災手段移転地もみられる場合があり、そこでは仮設住宅や災害公営住宅と同様に、高齢者の孤立化の危険が生じる。そのため、防災集団移転地においても、高齢者サポート拠点や支援員制度など仮設住宅時代の高齢者支援の社会的資源を有効に活用して、積極的な高齢者支援を行うことが必要になる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目は5つの災害公営住宅、2つの集団移転地、2つの集約化された仮設住宅に入居する高齢者世帯を中心に家庭を訪問し、高齢者へのインタビュー調査を行った(調査内容は以下を参照)。 主な調査は夏休みおよび冬休みの学期休み期間を利用して行うとともに、並行して調査の合間に高齢者世帯を中心に各戸を訪問して傾聴ボランティアを行い、信頼関係の構築に務めた。また、それぞれの仮設住宅や災害公営住宅に併設されている集会所及び高齢者サポート拠点の利用実態を観察するとともに、自治会役員や支援員の活動内容について聞き取りを行った。移転先の住宅において研究成果を3月に報告するとともに、大船渡市役所にも報告している。 【インタビュー調査の内容】(高齢者)震災前後の外出行動と交流状況の詳細、余暇活動・趣味活動の状況、集会所の利用(支援者)支援の具体的な内容、支援を行うようになった経緯、支援活動の運営状況(集会所の支援員、高齢者サポート拠点スタッフ)活動内容についてのインタビュー調査 【調査スケジュール】5月連休:インタビュー調査 (災害公営住宅:A,B)、8月~9月:インタビュー調査(災害公営住宅:K,M,S) 12月:補足調査(インタビューの不足分) 3月:報告会の開催、(31年度) 5月連休:インタビュー調査 (集団移転地:M集団移転地,S集団移転地、)、8月~9月:インタビュー調査(集約化仮設:A仮設,J仮設) 12月:補足調査(インタビューの不足分) 3月:報告会の開催、
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今後の研究の推進方策 |
これからは引き続き、高齢者サポート拠点の活動を理解するために調査を進め、コミュニティの状態と福祉サービスに違いがみられる5つの災害公営住宅、2つの集団移転地、2つの集約化された仮設住宅において、高齢者サポート拠点による福祉サポートの活動が高齢者の交流の内容にどのような違いをもたらすのかを明らかにするための調査を行いたいと考えている。移転先の各住宅において研究成果を3月に報告し、大船渡市役所にも報告する。 (平成3 1年度の計画)最終年も継続して高齢者世帯および支援者を中心にインタビュー調査を行いたい。(調査内容は以下を参照)。 【インタビュー調査の内容】(高齢者)震災前後の外出行動と交流状況の詳細、余暇活動・趣味活動の状況、集会所の利用(支援者)支援の具体的な内容、支援を行うようになった経緯、支援活動の運営状況(集会所の支援員、高齢者サポート拠点スタッフ)活動内容についてのインタビュー調査 調査スケジュール(31年度): 5月連休:インタビュー調査 (災害公営住宅:A,B)、8月~9月:インタビュー調査(災害公営住宅:K,M,S) 12月:補足調査(インタビューの不足分) 3月:報告会の開催、(31年度) 5月連休:インタビュー調査 (集団移転地:M集団移転地,S集団移転地、)、8月~9月:インタビュー調査(集約化仮設:A仮設,J仮設) 12月:補足調査(インタビューの不足分) 3月:報告会の開催、
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額7,765円が生じたが、この理由は謝金の予算を当初50,000円と予想していたが、実際には、そのような謝金を支払う必要がなくなったためだと考えられる。この7,765円に関しては、次年度の謝金で再度使用したいと考えている。
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