研究実績の概要 |
本研究では、岩手県大船渡市の防災集団移転地を対象として、仮設住宅から防災集団移転地への移転プロセスがコミュニティの活動状況や高齢者の交流関係にどのような影響を与えたのか、どのようなニーズや希望を有しているのかを明らかにすることを通じて、防災集団移転地における高齢者の孤立化を防止するためにどのような支援が求められるのかを検討した。1)コミュニティの状況が異なる2つの防災集団移転地(J,K高台)について検討したところ,被災前の集落から仮設住宅を経て防災集団移転地へと至る移転のプロセスが,その後の防災集団移転地におけるコミュニティの状況と密接な関連があることが明らかとなった。2)J,K高台の住民に行ったアンケート調査より、交流関係や友人の有無、交流の頻度のいずれにおいてもJ高台よりもK高台の方が高い割合を示しており、コミュニティ活動と同様に交流関係においてもやはりK高台の方が活発であることが明らかとなった。3)J,K高台の住民に行ったアンケート調査の結果より、J,K高台の住民のコミュニティ活動への参加状況を検討したところ、K高台では「地区公民館」と「集会所」が住民の日常的に集まる場となっており、そこで自治会活動や地域行事を行っていた。一方、J高台には公民館も集会所も設置されていないために、自治会活動も地域行事も行われていない。4)集団移転先の高台での生活に対して、K高台では高齢者も含めてすべての人が肯定的な評価を与えたのに対し、J高台においては生活への満足度はかなり低く、とりわけ高齢者から住民間の交流の場が少ないことや日常的に頼れる人がいないことなど交流関係に関する不安や不満が多く聞かれた。5)K高台の高齢者は高齢者サポート拠点や支援員制度の必要性をそれほど感じていないが、J高台の高齢者にとっては高齢者サポート拠点と支援員制度は高台移転後も必要とされていることが明らかとなった。
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