研究実績の概要 |
2020年度は、住宅・土地統計調査(2018)の集計データを用いて、奄美市の住宅ストックについて分析を進めた。とくに本研究の主対象である織工アパートが該当する「民営借家(非木造)」とその比較の対象として「公営の借家」に注目した。 まず、建築時期別の住宅数はどちらも1970~80年代に建築された住宅が半数以上を占め、特定の時期に集中している。ただ、非木造の民営借家は市街地に点在していることから、団地として存在している公営住宅と比較すると、建築時期の偏りが認識されにくい。 次に、住宅ストックの質的な状況を把握するため、腐朽・破損ありの住宅数とその割合をみた。建築時期が古いと腐朽・破損率が高い傾向が認められ、とくに公営の借家において1980年以前の腐朽・破損ありの住宅数が730戸と推計され、総数2,830戸の約25%を占めている。一方、非木造の民営借家のうち腐朽・破損ありの住宅数(カッコ内は腐朽・破損率)は、590戸(19%)であり、1970年以前の住宅において70戸(58%)、1971-80年の住宅において270戸(29%)となっている。また、空き家については実態把握が難しいものの、住宅・土地統計調査では1,760戸と推計され、うち非木造共同住宅が1,160戸を占めており、空き家全体の66%に相当する。集落部に多い木造戸建て(270戸,15%)が意外に少ないことから潜在的な空き家が反映されていない可能性はあるものの、非木造共同住宅のカテゴリーに相当する公営住宅や民営の借家においても相当数の空き家が存在することがうかがえる。 これまでも住宅マスタープラン等で公営住宅の建替えや改修の必要性が指摘されてきたが、奄美市では織工アパートを含む非木造の民間賃貸住宅も公営住宅と同様に1970年代に建築された住宅数が多い上、腐朽・破損率が比較的高いなど、同様の状況にあることが示唆される。
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