研究課題/領域番号 |
17K06714
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
小野 尋子 琉球大学, 工学部, 准教授 (20363658)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 基地跡地利用 / 地下水涵養 / 水循環基本法 / タンクモデル |
研究実績の概要 |
宜野湾市普天間飛行場跡地利用計画として、平成25年3月に「全体計画の中間とりまとめ」1)が策定され、その中で地下水保全の方針がまとめられた。しかしその後の検討の中で、地下水をどの程度保全すべきなのかという量的な検討や、流域別の検討については不十分であった。 行政が策定する基地跡地利用基本構想について計画策定支援型の取り組みを著者が実施せざるを得なかった経緯は、大きく2点ある。1点目は平成24年3月に制定された「沖縄県における駐留軍用地跡地の有効かつ適切な利用の促進に関する特別措置法(以下、特措法)」における基地跡地利用特有の時間的制約である。2点目は、1点目の時間的制約を考慮すると環境配慮については返還前の早期の検討が重要にも関わらず基地内に立ち入れない事から、現在主流の地下水を含む水収支モデルの解析手法であるタンクモデルを使用できないという点である。実際の大規模開発では、法に基づく戦略的環境アセスメントが実施される。しかし、先行して返還された跡地利用計画では、返還後基本構想から基本計画へと急速に移行する為、戦略的環境アセスメントによって検討内容を根本から変更する事は難しい状況であった注4)。現状では普天間飛行場を涵養源とする地下水が、海岸段丘下で湧水となり、活発な農業用水利用がなされており、基地跡地の開発の仕方いかんでは多大な影響を与える事が明らかな為注5)、事実に基づく慎重な検討が求められる。しかし、1点目の特措法の時限縛りにより一度返還されてしまうと環境配慮を含めた時間をかけた協議が難しいという矛盾を抱える。 以上より、返還前の立ち入りが不可能な基本構想検討段階において、可能な限りの環境配慮と検討が重要となる。将来にわたる水紛争を未然に防ぐ為、また現在主流の調査手法が使えない事より、大学の中立的で試行的な調査研究による計画策定支援が必要となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
普天間流域下において湧水量実測調査を継続した事で、①各湧水群の降水量と湧水量の関係を説明する応答モデルを作成し、日流量変化を概ね短期降水量累計と長期降水量累計、及び定数項で再現できるモデルが得られた事(R2=0.510~0.77)、②、①によりタンクモデルを組めない現在においても仮想的なタンクモデルの推計が可能となり、現在ほぼ唯一の水収支と地下構造の合理的な推定根拠となっている事、③これにより、基地跡地利用の100haの大規模緑地計画の配置計画に対して、根拠のある配慮事項の提案を行える事、④及び計画策定支援研究としてこれらを調整し行政計画に反映してきたためである。 また、国内の先進的な緑地を中心とした街づくり(アイランドシティ、幕張)、跡地が国営公園になった事例(海の中道海浜公園)などの事例調査も実施できた。実践的な研究として、これらの成果について地主や行政との勉強会も開催した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は引き続き、地下水水位調査を実施し、仮想タンクモデルと実際の水位の変動についての相互関係について考察を進める。また国内外の事例を調べて、検討を進め、地主や行政に研究成果を還元しながら、跡地利用計画の計画策定支援にあたる。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外事例の調査を予定していたが、海外調査は実施が不可能であったため。現在でも継続して研究を進めていくため、調査先との丁寧な調整を進めてから次年度以降に海外調査を実施する予定である。
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