最終年度では、これまでの研究のとりまとめとして、調査結果の整理、分析を精査することを軸に進めた。既成市街地の住宅更新の従来のメカニズムが、人口減少による住宅需要の変化にともなって変容していることが確認された。 1980年代より、東京の既成市街地をフィールドとして、その住宅更新の動向を把握することに努め、詳細に経年的分析を重ねてきた東京西部の既成市街地(山の手住宅地)の建築確認の状況および住宅地図による変化を重ね、空き家事例の分析を含めて整理した。その結果、特徴的な変化として、①住宅更新の遅れ、②空き家化、③資産運用型の建替えが確認された。 ①住宅更新の遅れは、親子二世帯の同居が減少し、親世代の高齢化(高齢夫婦世帯で暮らす期間の長期化)が進んだため、子世帯が親世帯の居住する住宅を継承することがないままに老朽化させている。②別居した子世帯は住宅取得した後、そこでの居住期間が長くなれば、親の住宅に戻ることはなく、親の住宅が空き家化している。③老朽化する前に建て替えを選択する場合、同居するよりも資産運用型の建て替えを選択する傾向がみられた。 以上の分析をもとに、資産価値の高い住宅では相続され、子世帯による継承される形から、相続後の売却(細分化)や資産運用型建て替えによる市街地の変容へと大きく変わりつつあることが明らかとなった。さらに、資産運用型建て替えによる市街地への影響および自宅以外の賃貸(住宅)部分の活用事例を収集し、賃貸住宅併用の建て替えの増加および賃貸住宅の多様化について考察を行った。
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