研究課題/領域番号 |
17K06722
|
研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
水野 雅之 東京理科大学, 理工学研究科国際火災科学専攻, 准教授 (40366448)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 防災計画 / 全館避難 / 順次避難の最適化 / シミュレーション |
研究実績の概要 |
昨年度開発した画像処理ソフトを用いて,階段踊り場での移動軌跡を各避難者のものを抽出して,これらを重ね合わせる作業を実施した。その結果,その階から避難者が階段に入ってくる場合と,入らない場合で,上階から階段を下りてくる避難者の移動軌跡が変化することを明らかとし,また移動中の速度区分を表示することを試み,階段踊り場内においては踊り場から次の段部に下り始める手前で速度が遅くなっていることを確認した。この原因として考えられることは,避難者が階段を下り始める際に,①下の段に足を移動させるために歩幅を調整した,②階段での前の人との距離を調整したなどが考えられるが,その辺りの調査を進めることで,場合によっては踊り場内の避難者の移動速度設定に関して組み込むことを検討する。現時点では,複雑なモデルにすることによる効果が推し量れないため,今後の実測データとの比較状況を見て検討する。 本年度,そのコーディングを外注して開発した階段避難シミュレーションについて,そのプロトタイプを用いた計算実行作業を進めた。試行錯誤を繰り返しているが,避難途中でいわゆるアーチアクションによって流動が停止してしまうなどの現象も現れており,スムーズに解析が進まない状況である。引き続きモデルの改良や追加機能の導入も含めて検討しているところである。 一方,避難シミュレーションと実測データとの比較を行うため,実測データに関して,階段室内部の移動に関する「密度と速度の関係」,「密度と流動量の関係」について昨年度実施した避難訓練の調査データを対象に整理した。次年度,シミュレーションの結果が得られ次第,シミュレーションの妥当性評価の一環としてこれらの比較検証を行う計画である。 また,本年度の避難訓練調査を実施し,新たなデータを蓄積した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コーディングを外注した階段避難シミュレーションが,避難者の流れが途中で停止してしまう問題などが発生しており,それをどのように回避するのか,ということについて検討を進め,具体的な解決方法の候補を整理した。次年度,どのような対処を行うか改めて検討し,実装する。 避難訓練調査の実施やシミュレーションの妥当性評価のためのデータセットの準備作業については順調に進んでいる。次年度,シミュレーションが整い次第,順次避難シナリオの検討を進める。
|
今後の研究の推進方策 |
平成30年度に開発した階段避難シミュレーションがアーチアクションの形成によって流動を停止させてしまう件については,アーチアクションによる停止を強制的に解消するような移動モデルを組み込むことで解消させる計画である。このとき何を指標として流動停止を判断し,どのような移動モデルでアーチアクションによる停止を解消させるか,という点が課題である。既に幾つかの候補を考えているので,開発費用との関係も考慮し,より適切なモデルを実装する。 また,順次避難シナリオの最適化については,避難訓練の調査を実施させてもらっている建物をモデルとして検討を進めているが,結局のところどのようなクライテリア設定するのか,という点が課題となる。研究ベースでは幾つかの設定に対する性状を分析することで十分であると思われるが,こうしたことを建物管理者の意向を下に調整したり,あるいは建物使用者(そのうちの複数の代表者を対象に)との合意形成を図り,全体に周知して了承してもらう作業が必要であると考えている。こうした全館避難における「避難開始を階によって遅らせながら混雑の緩和を図ること」,とはいえ一定の混雑した状況を形成しながら階段内流動を行わないと流動量が低下して避難時間の延長につながるため,「階段内で一定の混雑が生じること」ついて,場合によってはその数値設定にまで踏み込むかなどの合意形成が必要であると考えている。こうした手法の検討は,将来の課題としたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究経費支出上の誤差の範囲である。
|