本研究は、少子高齢社会における公共施設の整備と管理運営における官民連携のあり方を議論するために、特に英米で展開されている公園緑地の整備と管理運営をすすめる官民連携の手法を明らかにし、わが国の萌芽的な取り組みを把握したうえで、今後の展開について議論することを目的としている。 本年度はわが国の萌芽的な取組を把握するために、盛岡市の取組みの現地及びヒアリング調査を行い、地方都市の既存の公園の利活用促進を通したまちづくりについて明らかにした。盛岡市では鉄道駅と中心市街地の2拠点の間に距離がある現状に対して、都市の回遊性を高めるために移動途中の公園の魅力を高める取組が行われ、近年では海外観光客の増加もみられることがわかった。取組に際しては、行政内の縦割りの管理を超えた連携や、中央省庁との連携等の模索があったこともわかり、今後の地方都市における公民連携による公園の利活用増進に向けたヒントがあった。 本研究全体を通して、英米で展開されている公園緑地の整備と管理運営をすすめる公民連携の複数の手法が明らかになった。具体的には、英国においては、10年程度前に導入されたBID(ビジネス・インプルーブメント・ディストリクト)による公共空間の管理運営が首都ロンドン中心部や地方都市で展開され、中心市街地活性化に向けた公園緑地の利活用が進んでいることがわかった。また新たな大規模開発においては、パークチャージ等の受益者負担制度が取られていることや、トラスト組織による公共財である公園の管理運営を行う方法等もあることがわかった。米国においては、BIDによる公共空間の管理運営はこれまでも先進的な取組として紹介されてきたが、新たなにNPO組織との協働による管理運営の手法を明らかにし、複数の民間組織の連携による管理運営の知見を得た。
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