研究課題/領域番号 |
17K06731
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研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
山田 圭二郎 金沢工業大学, 環境・建築学部, 准教授 (00303850)
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研究分担者 |
上山 肇 法政大学, 政策創造研究科, 教授 (10712531)
菅原 遼 日本大学, 理工学部, 助教 (10755432)
市川 尚紀 近畿大学, 工学部, 准教授 (50441085)
坪井 塑太郎 公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構, 人と防災未来センター, 主任研究員 (80449321)
畔柳 昭雄 日本大学, 理工学部, 教授 (90147687)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 都市空間 / 公私計画論 / マネジメント / 地域運営 / ガバナンス / 公共性 / 空間デザイン / 持続可能性 |
研究実績の概要 |
今年度は、各研究メンバーが新たな事例の収集を進め、6回の会議を通じて事例報告、情報共有を進めた。また本研究メンバーが所属する「水辺の公私計画論検討小委員会」(日本建築学会)でのこれまでの事例収集・報告における論点の整理を行った。 今年度の事例収集・分析の例を挙げれば、ヤミ市を起源とする商業空間(新天地・中央味食街、金沢市)の形成過程と土地所有・管理形態の変遷、商店街(木倉町、金沢市)における建築構造、土地及び建築の所有・管理・利用形態の変遷と地域内外の諸主体によるガバナンスの進展、山中温泉(加賀市)の空間運営実態の把握・分析(空間構成要素と社会的活動との対応関係の把握と分析)等を行った。 また、日本都市計画学会第52回学術研究論文発表会において「都市の水辺における公私計画・マネジメントのあり方」と題する都市計画WSを開催し、広島県広島市「水辺のオープンカフェ」やアメリカ・ニューヨーク市「ブルックリン・ブリッジ・パーク」等の国内外の事例における水辺の現状と課題、そこでの空間利用・管理運営の特徴を通して、都市の水辺の新たな公私計画・マネジメントのあり方を議論し、研究成果の社会還元と啓発を行った。 公私計画・マネジメント論(デザイン論)の論点としては、1)個別的空間管理の限界と公私一体型の空間運営の重要性(「公共性」の捉え直し。「公私計画・マネジメント=「私たち(公)」の物語をいかに描き、自己実現するか)、2)自己実現に向けた地域運営・自治(ローカル・ガバナンス)、3)パブリックライフの充実に資する空間・デザインの質、について確認した。また、事例整理は、計画・マネジメントに係る制度的押さえ、空間運営におけるガバナンスの様態、空間計画・デザイン(まちニハ的空間)、成果の波及展開に着目すると、今後の公私計画・マネジメントの展開に向けた示唆が大きく、社会的意義が高いであろうことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度である平成29年度の研究実施計画では、事例の収集・分析と整理を進めることとしていた。この計画に対して、本年度の実績として、「公」から「私」にいたる多様で複合的な諸主体の関与に留意しながら、各研究メンバーが事例の収集・分析を順調に進めることができ、公私計画・マネジメント(デザイン)論に係る論点や事例整理の視点・着眼点について議論し、一定の方向性を見出すことができた。また、当初予定していなかった実績として、日本都市計画学会学術研究論文発表会でのWSの開催を通じて、途中成果の公開と議論の深耕を図ることができた。 以上から、本研究課題はおおむね順調に進展していると評価することができる。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要に示した公私計画・マネジメント論の論点及び事例整理の着眼点をもとに、引き続き、事例の収集・分析を進めるとともに、予定する6回/年の会議における議論を通じて情報や視点・論点等の共有を図りつつ、事例の整理(類型化)と上記着眼点の妥当性の確認・検証・精緻化(キーワードの洗い出し)、不足する事例の充実等を図っていく予定である。 平成29年度交付申請書「平成30年度研究実施計画」に記載した「ケーススタディ」については、現在、富岩運河環水公園(富山県)における都市公園・港湾区域内におけるカフェ・レストランの設置事例(昨年度に研究メンバー共同で現地調査・ヒアリングを実施済み)についての調査を進めているが、今後、水辺を中心にケーススタディ対象地を複数選定し(例:山形五堰・御殿堰(山形市)、金山町(山形県)、江東区親水水路・内水河川(東京都)、雨森地区・針江地区・五個荘地区(滋賀県)等)、現地踏査・ヒアリング調査等を実施していく予定である。 本研究課題に関する3カ年(平成29-31年度)の研究成果は書籍として刊行することによって成果の社会還元を行っていく予定としている。したがって、本年度(平成30年度)内に書籍の目次構成を検討・確定、執筆の役割分担を決定して執筆を開始すべく、本年度内6回の会議スケジュール(各回の会議開催日)を既にほぼ確定させている。この工程に従って研究の進捗を管理し、研究の円滑な推進と成果の取りまとめを図る。 なお、平成30年度日本建築学会大会(東北)では、「水と緑」をテーマとした1セッションを構成し「水と緑の公私計画論に関する研究」と題する一連(6題)の研究発表を行うことが決定している。今後も本研究の進捗をみながら、昨年度開催した都市計画WSのように、学会発表、WS、セミナー等の様々な発表形態を模索しながら、途中成果の発表・公開と議論の深耕を図っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題と関連する研究助成として、本研究課題と同一研究体制による「都市の水辺の公私計画論の構築に向けた実証的研究」と題する活動テーマが、産・官・学・民の連携による全国各地の研究交流活動を支援する日本都市計画学会の研究交流事業「研究交流分科会A」(代表:畔柳昭雄(科研・研究分担者)、活動期間:平成29年4月から平成32年3月、3年間の助成総額:1,480,800円)の採択を受けた。このため、本研究課題のうち、都市の水辺を対象とした事例研究について、連携研究者・研究協力者(4名)に支払う現地調査旅費等を上記研究交流活動資金から充てることができた。その結果、次年度使用額欄の助成金が生じたものである。 次年度は、上記助成金額分を含めて、事例調査の対象を増やすとともに、連携研究者・研究協力者の現地調査・打合せ旅費として使用し、共同での事例分析(ケーススタディ)の充実を図る。また、日本建築学会大会(東北)で発表予定の研究協力者の研究発表のための旅費としても使用する計画である。
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