研究課題/領域番号 |
17K06733
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
鈴木 博志 名城大学, 理工学部, 教授 (30121502)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | サービス付き高齢者向け住宅 / 地域包括ケア / 立地志向 / 居住支援 / 地方性 |
研究実績の概要 |
本研究では、「サービス付き高齢者向け住宅」の供給状況を把握し、高齢者と地域社会の自立と連携を引き出す供給方策を明らかにすることを目的に実施している。そのため、地域別に「サービス付き高齢者向け住宅」の実態を把握・解析することで、国内の代表的な地域を対象にヒアリング調査とアンケート調査を実施してきた。 調査の対象地域は、愛知県、岐阜県、東京都、長野県、神奈川県とし、大都市圏および地方圏の中からそれぞれ抽出した。これらの調査は、毎年計画的に実施しており、昨年度にすべて終了している。 その結果、分析途中の感触ではあるが、「サービス付き高齢者向け住宅」は、地域によって入所者像、入所動機や施設選択理由などの背景が大きく異なっており、地域の中で施設が果たす役割や意義が大きく異なっている状況が読み取れている。施設の設立当初に想定していた事前的状況(入所対象者の想定は、要介護度が高くないが、健康に自信がもてない中所得者が入居できる住宅)とは異なり、事前の想定と大きく異なる状況にあることが明瞭となった。すなわち、全国一律の制度設計には、基本的に問題のあることが明らかとなった。 そのため、地域社会を基本にして、その地域のニーズに応じた供給が重要であること、市区町村単位で施設量の適正化を確保する必要性が高いことが求められている。また、施設への入居後には、入居者は従前住宅への対応が求められるが、空き家になるなどのケースも多くみられることが課題となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要でも一部示したように「サービス付き高齢者向け住宅」のヒアリング調査、アンケート調査は、愛知県、岐阜県から始めて、東京都、長野県、神奈川県と順に実施し、計画通りに進めてきている。特にアンケート調査の内容は、施設供給計画の前提となる入居者の社会的属性、入居の動機や施設選択の理由などを調査している。 さらに、立地については、地域包括ケアにおいて中学校程度の距離内を対象とするとのことから、施設の立地場所、入居者の従前居住地や子供の居住地の関係も調査している。また、施設への入居は、同時に住まいの住み替えとなることから、従前住宅の家族構成や住宅の処分方法についても質問している。 これらのアンケート調査は、都市の中心部より半径15kmの範囲に立地する市区町村の中で施設が多く立地する地区を抽出し、かつ無作為に抽出した施設を調査対象とした。調査回収票は、調査の困難さからそれほど多くはないものの、分析には十分可能な量を回収・確保している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、回収したヒアリング調査、アンケート調査の分析である。分析のねらいは、「サービス付き高齢者向け住宅」の地域別相違に置いている。全国一律の制度設計で始めた施策が、地域の住宅事情や高齢者施設の状況により課題が生じている状況を明らかにすることにある。 次に、入所対象者の想定として、要介護度がそれほど高くないが、健康に自信がもてない中所得者が入居できる住宅としていた前提状況が、当初の想定とかなり相違している状況を明らかにすることにある。 地域包括ケアとの関係で、施設の立地は中学校程度としている利用圏域ついて、近接した地域内の利用だけでなく、遠距離から子供の居住地近くの施設への「呼び寄せ」的な入居、逆に子供の居住地から遠く離れる「引き離し」的な入居がある実態も明らかにする計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度は、神奈川県において入居者に対して「サービス付き高齢者向け住宅」のアンケート調査を実施した。しかし、調査票の回収状況が悪いため、解析に耐える回収票を確保することができなかった。そのため、アンケート調査の対象地域を拡大し、調査対象施設を増やす必要が生じた。拡大調査を実施するに際して、2020年度に使用する予定の費用を前倒しして使用したが、予算内に収まったため次年度使用額が生じた。2020年度は、国内調査旅費として使用する計画である。
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