研究実績の概要 |
木造の3階建建築物に関する規制が緩和されて以降、木造3階建て建築物の建設が進んでいる中で、住宅に関しては狭小な敷地に建設されるいわゆるミニ開発の戸建て住宅が多く含まれており、都市住宅としてのポテンシャルを評価する見方がある一方で、老朽化による耐震性の低下や過密立地による防災や居住性の問題などが指摘されてきた。 本研究は木造3階建戸建て住宅が多数立地している大阪府大東市を対象に、現地調査により狭小敷地の3階建て住宅は、隣地との間隔も十分に確保されていない場合が多く、建て替えが難しいことが想定されること、特に集積が進んだ街区については、将来的な老朽化による空き家の増加や街区の荒廃・防災上の問題が危惧されることを明らかにした。また、大東市内の分布状況を調査した結果、狭小敷地の木造3階建戸建て住宅は、特定の地域に集積する傾向があり、将来的に密集市街地化して防災上の課題となる可能性があることを明らかにした。 さらに大東市内の木造3階建戸建て住宅の居住者を対象に戸別配布・郵送回収によるアンケート調査を実施し、1,000票を配布して247票の回答を得た。回収率は24.7%である。主な結果として、若年層は「住み続けたい」とする傾向が高いが、年齢が高くなるら連れて密集していることからくる防災面の不安や建て替えのしにくさの問題、居住スペースが2階以上にあることによる生活上の不便さ、高齢で体が不自由になった時の生活のしにくさなどを理由に「住み続けたくない」とする割合が高くなっていること、階段を利用する頻度が高いことから住宅内の事故を経験した割合が高いなどの結果が得られた。 狭小敷地の木造3階建戸建て住宅は、事業者側から見れば利益率の高い開発であり、居住者側から見れば手頃な金額で得られる戸建て住宅として一定の需要があるが、特に集団で立地することにより密集市街地と同様な危険性をはらんでいると言える。
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