研究実績の概要 |
【実績1】M. Tanaka (2019), The situation and background regarding the movement process for residents in the area affected by the nuclear disaster, Case study of the Abukuma area, Fukushima Prefecture, European Network for Housing Research 2019, Harokopio University, Athens. 【概要】被災地の「孤独死」問題を解く鍵は,従前の暮らしに織り込まれていた生活行動を支える空間にある。だとすれば,従前と同じ生活が困難な状況を余儀なくされた原発被災地では,何を拠り所とすればよいのか。本研究は,この問いをもとに,原住地(福島県双葉郡川内村第8区)に帰還した世帯へのインタビューを通して,いかに新たな生活空間が再生されてきたのかを把握したものである。帰還世帯の多くは,元通りの暮らしは困難であることを理解した上で,原住地での再居住を選択している。その生活は,多大な喪失とともにある一方,物的な環境の構築を通した新しい土地との関わり方が模索されている。 【実績2】基調講演Disaster risk and community @Symposium: Resilient living environments in the recovery from the disaster, Kobe University, Hyogo, Japan (Feb. 4, 2020). 【概要】これまでの研究実績をもとに,今後の巨大災害リスクを見据えたレジリエントな居住環境の構築に向けた課題を示した。現行の減災・復興政策は,確かに災害リスクを軽減,回避する効果を持つ。一方,個々の生活再建,生活継続の視点に立てば,そのリスクは非脆弱層から脆弱層への転嫁が進み,レジリエンスの向上はその反映にすぎないという面がある。「孤独死」やその背景にある不安定居住の継続は,こうしたリスクの不平等な分配/再分配がもたらした結果であると言える。
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