研究課題
【内容】本研究は,災害復興過程で生じる「孤独死」の実態とその背景を明らかにするものである。東日本大震災の仮設住宅と災害公営住宅を調査対象とした。警察の検視報告書を基にした統計分析を行う。発災以来「孤独死」は発生し続け,仮設住宅から災害公営住宅への移行に伴い,問題は深刻化する。第1に,死後発見までの経過時間は長期化する。すなわち「孤独死」者の生前の孤立状況は深まっている。第2に,年齢層は徐々に若年化する。しかも50歳代以下の非高齢層ほど発見が遅れる。第3に,非高齢層の「孤独死」は,失業とアルコール依存の2点に関係している。第4に,被災地から地理的に離れた仮設住宅,積層型の災害公営住宅の中高層階は,それらのリスクを抱えた入居者の孤立を決定づけている。第5に,以上の点は阪神・淡路大震災での「孤独死」の実態に酷似する。【意義】「孤独死」問題への対策は多様に講じられている。だが事態は改善に向かってはいない。その原因はアプローチの偏りにある。孤立の契機は人間関係の切断に先立つ生活行動の途絶にある。本研究の知見によれば,従前の生活圏との重複を維持すること,同圏域内にあった自然・建造環境と近似した生活空間を確保することの2点が重要となる。これまで医療・福祉分野に依存してきたこの問題に対し,空間計画からのアプローチの必要性を指摘し,その主要な論点を導いた点に本研究の意義がある。【重要性】「孤独死」問題は,超高齢社会の進展とともにもはや避け難い現象となりつつある。だが本研究が捉える「孤独死」はそれらとは一線を画する。被災者の多くは住宅をはじめ家族や生業さえも失っている。自己決定機会から遠ざけられ,本人に帰責できない状況下で生じた「孤独死」は防がれなくてはならない。災害は激甚化・頻発化の様相を呈している。このままでは「防ぎ得た災害死」は増え続ける。その動きを食い止める研究を重ねる必要がある。
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Journal of Disaster Research
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