最終年度である2019年度はこれまで調査を行ってきた奈良市大安寺西地区自治連合会での空き家管理業務のコミュニティビジネス化に取り組んだ。前年度に行った地域内3600世帯を対象に行ったアンケートの結果を4月に各自治会長に報告し、地域での生活満足度や地域活動への理解などについて意見交換を行った。住民のコミュニティビジネスへの認知は24%であり、68%が分からないと回答していた。自治会が空き家を管理することについては、望ましいとの回答が15%、望ましくないが21%、分からないが58%であり、自身が空き家管理に協力することについては。協力できるとの回答は9%にとどまり、協力できないが34%、分からないが51%となった。分からないという回答の多さから、コミュニティビジネスや空き家管理については、まずはしっかりとした情報提供を行い、認知度を上げることが必要であると考えられる。また、主体的に関わることへの抵抗がみられたことから、地域課題をいかに“我がこと”として捉えてもらえるかも重要である。これは地域活動が個人の負担増などネガティブなイメージがもたれていることから、活動そのものの見直しも必要である。調査対象をしていた自治連合会が2019年6月にまちづくり協議会へと発展したことから、これらについては今後新たな取り組みが展開されることに期待をしたい。また、協議会へと移行したことから、中心メンバーからは組織としての自立に向けコミュニティビジネスへの意識は高まっている。 空き家管理のビジネス化について民間事業者の動向を把握するため、全国の空き家管理事業を行っている272事業者を対象にアンケート調査を行い、76事業者から回答を得た。この成果については現在論文として発表準備中である。 海外事例調査としてはスペインでの調査を行い、特にバルセロナにおける住民組織の活動について現地での聞き取りを行った。
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