研究課題/領域番号 |
17K06742
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
野村 俊一 東北大学, 工学研究科, 准教授 (40360193)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 折衷様 / 和様 / 大仏様 / 禅宗様 / 中世仏堂 / 東アジア |
研究実績の概要 |
2017年度は日本の瀬戸内地方(おもに広島・愛媛・香川)に所在する折衷様建築および厨子を悉皆調査し、軒下組物と台輪・頭貫の組み合わせによる様々なバリエーションを通時的・共時的に確認することができた。この研究進捗の一部を奈良文化財研究所で行われた研究会にて発表した。発表にあたり今回留意したのは山西省西部及び陝西省東部の元代に造営された建築群で、屋根荷重を支える建築の架構に特殊な技法が生じていたことがわかった。今後、中国の他地域での事例と併せ、日本の大仏様や禅宗様にみる技法との差異についてより詳しく検討する予定である。 また、経典を保管し看経するための建築をめぐって、建長寺衆寮と天竜寺輪蔵に着目し、その意匠と技法について中国の事例を比較しながら特徴を検討した。経典を保管し象徴的な意味を帯びつつあった輪蔵は、中国と日本とのあいだでその実態と系譜に差異が見られた。夢窓礎石が具現化した天竜寺輪蔵は、天宮楼閣が設けられた点で、現存する中国の遺構や記録を忠実に再現したものと思われる。この天宮楼閣が京都五山の第一位に君臨した禅院の輪蔵に設けられ、多数の禅律僧が参集するなか盛大な供養が行われたことの意味は大きい。しかし、日本でのその後の展開は、中国の事例――例えば天宮楼閣を備える報恩寺華厳蔵(四川省平武県)――と異なる系譜を辿ることになった。天竜寺輪蔵は日中間の建築情報網の結節点の一つに、建築の技法・意匠とその後の展開の分岐点の一つに位置づけられるのである。 ほかに併せて、京都の数寄屋風書院造と茶室を調査することで、書院造が草庵風として意図的にデザインされた具体的な手法を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2017年度は便宜を図り若干調査予定先を変更したが、その分結果的に多くの建造物を調査することができた。2018年度の調査先を若干調整することで、当初予定よりも調査進捗が進むであろうことが予想される。
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今後の研究の推進方策 |
【現在までの進捗状況】でも記したとおり、調査先の変更が生じたが、その分当初予定よりも調査進捗が進むであろうことが予想される。引き続き予定を鑑み他地域の調査を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
【現在までの進捗状況】でも記したとおり、調査先の変更が生じたため。本年度において、昨年度完遂できなかった現地調査を遂行する予定である。
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