今まで日本建築史学では、中世の折衷様建築について、日本の状況に限定しその系譜を叙述するものがほとんどであった。戦前・戦後まもなくは、その類型化の試みがいくつかの研究者らにより進められてきたものの、近年は折衷様あるいは和様という言葉で一元化するものが多いのである。 鎌倉期以降、和様に大仏様や禅宗様が加味されてゆき、全国にさまざまなキャラクターを持つ建造物が開花した。中国建築の影響もあって、かつ日本独自の状況と併せて、特徴のある意匠と技法が散見されるようになったのである。本研究は、日本の折衷様建築の実態をより詳細に理解するための基礎的研究としても意義がある。
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