本研究は、ノワジエル=シュル=マルヌ(ショコラ・ムニエ社、フランス)、ボーンヴィル(キャドバリー・ブラザース社、イギリス)、ニュー・イアーズウィック(ラウントリー社、イギリス)、ハーシー(ハーシー・チョコレート社、アメリカ)というチョコレート・メーカーが建設した工場村において「職」ー「住」環境がどのように改良されたのかを、踏査・文献調査に基づき分析するものである。本研究期間中、研究代表者が、2018年度、2019年度の2度にわたって手術入院をしたため、アメリカ、ハーシーへの踏査・文献調査を行うことができず、研究期間を1年間延長したが、本2020年度には世界的なコロナ・ウィルスの蔓延と、アメリカにおけるアジア人排斥の動きが見られたことから、予定していたハーシーへの踏査・文献調査を断念した。 そしてその調査費を日本で購入可能な文献資料購入に振り替え、上記4事例のそれぞれについて、1)チョコレート・ココア製造の工業化と新商品の製造・販売、2)工場村(工場・労働者住宅)開発の経緯、3)工場村の都市計画(道路、街区、画地、公共施設、オープンスペース)、4)工場建築と福利厚生施設(平面、外観)、5)企業主住宅(平面・外観)、6)労働者住宅(住棟配置・外観、住戸平面・内観(特にリビング・ルームと水廻り(浴室・洗面所・便所))の項目で分析を行なった。本研究は、名古屋大学出版会または柏書房での出版を予定しており、4事例分析の原稿は脱稿済み、そこに序論、結論を加える所まで進捗している。 本年度には、日本でのコロナ禍の拡大と緊急事態宣言等の発出により、国会図書館での文献調査や日本建築学会への出席ができず、繰り越していた研究費を消化できなかったが、次年度でのコロナ禍の先行きが見通せないことから、本年度で研究を終了することとした。
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