研究課題/領域番号 |
17K06749
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研究機関 | 長岡造形大学 |
研究代表者 |
白鳥 洋子 長岡造形大学, 造形学部, 准教授 (00301838)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | パリ国立図書館 / アンリ・ラブルースト / 鉄構造 / 細い柱の空間 / サント=ジュヌヴィエーヴ図書館 / パエストゥム神殿の研究 / 19世紀フランスの建築 / 近代建築の源流 |
研究実績の概要 |
平成29年度では8月上旬から9月上旬にかけてパリに滞在し、現地調査、資料収集、関係者へのインタビューを行った。現地調査では外壁の意匠と構造、閲覧室、書庫室の鉄構造部、室内装飾などの各要素の詳細について、写真撮影を行うともに調査分析を行った。主要なアーカイヴではパリ国立図書館をはじめとするアンリ・ラブルーストによる図版資料の検索を行い、可能な資料は閲覧と複写を行なった。パリ国立図書館以外にもサント=ジェヌヴィエーヴ図書館とラブルーストのパエストゥム神殿の研究に関する資料を入手することができ、これは大きな収穫であった。後者二つは、今後、資料集として纏めたいと考えている。 2007年から行われている同図書館の改修工事について、全体計画の総責任者である建築家、エコール・ダルシテクチュール教授、ブルーノ・ゴーダン氏と、ラブルーストの間(旧大閲覧室)の修復の責任者である修復建築家、ジャン・フランソワ・ラノー氏とのインタビューを行うことができた。ジャン・フランソワ・ラノー氏はフランス政府歴史的建造物主任建築家、フランスICOMOS(国際記念物遺跡会議)会長である。ゴーダン氏とのインタビューでは改修計画の全体計画の概要と設計計画、工事に関して貴重な話を伺うことでき、ラノー氏へのインタビューにおいては歴史的建造物指定であるラブルーストの間の修復に関する貴重な話を伺うことできた。 一方、以前から着目していたパリ国立図書館の端緒について、その存在があまり明らかでなかったルイ9世の図書館についての資料を入手することができた。それらにより、同図書館は中世シテ宮のサント=シャペルの隣に位置した宝物庫の中にあったことを明らかにした。これについては『フランス国立図書館の端緒、ルイ9世の図書館 -シテ宮サント=シャペルの宝物庫と19世紀の建築-』、長岡造形大学研究紀要、第15号、2017にて纏めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年8月の現地調査ではパリ国立図書館の改修工事終了直後の状態の確認することができ、写真撮影も行うことができた。工事以前のパリ国立図書館では入館と資料閲覧に資格制限(博士課程以上の研究者)があり、閲覧室などの内部の写真撮影は厳しく禁止され、事実上不可能であった。今回の改修工事終了を機に写真撮影が可能となり、今回の写真資料は大変有意義であった。 図版資料の収集に関しては、パリ国立図書館、サント=ジュヌヴィエーヴ図書館、ラブルーストのパエストゥム神殿の研究に関する図版資料についても15年ほど前から現地訪問の際にしばしば閲覧を試みていたが、これらの図版資料は長年の間、一般非公開資料とされ、直接閲覧することも良好な複写を入手することも大変困難であり、事実上不可能であった。今回、纏まった資料を閲覧でき、複写を得られたことは大変大きな収穫であった。 インタビューに関しては、大変幸運なことに総責任者、建築家ブルーノ・ゴーダン氏、修復責任者、修復建築家ジャン・フランソワ・ラノー氏と直接面談でき、インタビューを行うことができた。直接、改修、設計計画、修復に関わった人物とのインタビューとして大変貴重な資料となった。 一方、今回、パリ国立図書館の端緒に関して新たな資料を見つけることができた。それに関しては、『フランス国立図書館の端緒、ルイ9世の図書館 -シテ宮サント=シャペルの宝物庫と19世紀の建築-』、長岡造形大学研究紀要、第15号、2017に詳細を記した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の推進の方策について、次年度(平成30年度)は2年目であり、更なる調査研究、資料収集を行う。勤務大学の夏期休業期間を利用して再びパリに赴き、更に現地での研究調査を継続する予定である。パリ国立図書館の連続クーポールの小屋裏の見学調査については、改修計画総責任者の建築家ブルーノ・ゴーダン氏の協力が得られており、国立図書館から無事に見学許可が下りることを期待している。昨年度は連続クーポールの小屋裏の検査で鉛が検出され、見学の許可が下りなかった。 一方、今年度はレンヌ大学(旧レンヌ大神学校)と附属図書館の現地調査も予定している。レンヌ大神学校はアンリ・ラブルーストの設計であり、後に国立レンヌ大学となった建築である。パリ国立図書館と同様にレンヌ大学の改修設計(2013)も建築家ブルーノ・ゴーダン氏によるものである。夏期休業期間で見学先が閉館であることが多いのであるが、可能な限り現地での見学調査、資料収集を行いたい。 平成30年度では、昨年度に得られたパリ国立図書館について資料の分析を行い、資料集として纏めたい。同時に、着手可能な主題から漸次的に概要や詳細について文章化を行う。昨年度の現地調査ではサント=ジュヌヴィエーヴ図書館とラブルーストによるパエストゥム神殿の研究に関しても貴重な資料が得られている。大変多くの資料を得られたのであるが、これらを整理し纏めていくことと、読み込みと分析を行うことが今後の課題である。サント=ジュヌヴィエーヴ図書館とラブルーストのパエストゥム神殿の研究に関する資料も大変貴重であり、これらの資料も纏めていくことを今後の課題としたい。資料の詳細の読み込みと分析を行い、考察を深め、資料集として纏めながら研究を進めることを予定している。
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