研究課題/領域番号 |
17K06753
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研究機関 | 岡山県立大学 |
研究代表者 |
西川 博美 岡山県立大学, デザイン学部, 准教授 (00749351)
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研究分担者 |
中川 理 京都工芸繊維大学, デザイン・建築学系, 教授 (60212081)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 武徳殿 / 大日本武徳会 / 台湾 / 近代和風 |
研究実績の概要 |
本研究は、武道の再興を目指して全国に建設された武徳殿が、日本統治時代の台湾において積極的に建設された事実に着目し、その建設経緯、当時の利用実態、日本内地の武徳殿との違いなど、植民地で武徳殿がどのような意味、用途を果たしたのかを明らかにすることを目的としている。 今年度は、台湾の武徳殿において、①支所や分会ごとに数多く建設された理由、②武道場以外の利用法、③行政と大日本武徳会との関り、④市区改正事業との関り、⑤建築の構成について日本内地の武徳殿との共通点と相違点、⑥設計者等を明らかにすることを目指し、日本国内と台湾の図書館での資料調査と、それによる調査対象の絞り込み、その絞り込んだ対象物の現地調査を行った。 具体的には、図書館等で収集した資料により、台湾において武徳会の運営について着目し、武徳殿が広く普及していった経緯について調査した。また、事前の調査で絞り込んでいた武徳殿について、その調査報告書等を収集し、その中でも現存している高雄武徳殿、龍潭武徳殿、新荘武徳殿の3つの現地調査を実施した。そして日本内地の武徳殿の構成についての比較のために、滋賀武徳殿や京都武徳殿などの国内の武徳殿の現地調査を行った。 また、図書館で収集した資料による成果をまとめ、日本建築学会中国支部研究発表会で発表を行った。そこでは、武徳殿の建設資金の確保の方法や、建設用地の確保とその支援についての実態を明らかにした。更に、現存する武徳殿の現地調査をすすめることで、台湾における武徳殿の建築的特徴を分析していく展開となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、まず図書館での資料調査を行ったが、そこで以下の2つのことを明らかにすることができた。まず一つめは、台湾における武徳殿の利用や管理について、警察の関与が深いものであった事実である。二つめは、大日本武徳会が、絶大な権威のもとに、その組織を拡大していった事実で、武徳会は台湾総督府から保護奨励する団体として位置付けられ、官有地の払下げや貸渡が容易になるなどの計らいもあったことである。しかし、あくまでも武徳会は非行政組織であるため、武徳殿建設の工費の捻出は深刻であった。当初は会員義金で賄われたのが、後になり、武徳殿建設のための寄付金が支部においてそのまま使えるようになったことがわかった。そうした経緯で1930年代以降になると、内地も凌駕する豪華な武徳殿が建設されていったことが、研究の成果として了解された。 また、台湾での3つの武徳殿の調査では、比較的大きな都市で建設された高雄武徳殿と、小都市で建設された龍潭武徳殿、また警察の敷地内に建設された新荘武徳殿という、立地条件の異なる武徳殿について観察することができた。そこでは、前者2つの武徳殿は都市において開かれた位置に立地するもので、とりわけ高雄武徳殿は和風意匠が顕著であった。龍潭武徳殿は警察の派出所と一体となった武徳殿の構成となっていたことがわかった。新荘武徳殿は、警察署敷地の内部にあり、都市には開かれておらず、あくまで警察施設の一部としての機能であったようだ。 以上のように、日本統治下の台湾における武徳殿がどのような役割を果たしてきたかについて明らかにするための、基礎的な歴史事象を確認することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、初年度の成果から、以下の二つの事項について、さらに調査・分析を進める計画である。 (1)初年度には、武徳殿の建設主体である大日本武徳会について、とりわけ建設費に関わる制度的変遷を明らかにした。それは、日本内地の武徳会本部による制度改変にしたがうものであったが、日本統治下の台湾における支部や支所ごとに、その本部の制度をどのように解釈し、実際に運営したかについて台湾側の資料調査から明らかにする。 (2)初年度に調査できた実例から、更に広げて、実際の建設の経緯がわかる武徳殿遺構について調査を行う。その際に、現存しないものでも、初年度に多大な建設費が充てられ建設された武徳殿ついては、建設経緯の記録などについても調査を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度は、大日本武徳会本部による制度の改変等を調べることで、日本統治下の台湾において武徳殿が数多く建設された理由を明らかにすることができた。そのための作業として、日本国内や台北市の図書館での資料調査とその分析を優先させることとなった。 しかしそのために、台湾の中でも訪問するには日数の要する彰化武徳殿や旗山武徳殿への現地調査は実現されなかった。今年度は初年度に収集できた資料を元に、そうした地域の武徳殿遺構の調査を実施する計画である。
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